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犬の帰巣本能はすごい?実際にあった犬の帰巣事例4つをご紹介!

犬の帰巣本能とは

人間の側のやむを得ない事情や事故、災害などで家族と離れ離れになった犬が、想像を絶する距離を踏破して家族と再開するという感動秘話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

これは「帰巣本能」とよばれる能力によるものといわれています。帰巣本能とは、自分のテリトリーや普段の生活の場、あるいは帰るべき場所に戻ることができる能力のことです。

また、この帰巣本能は、動物が生得的(生まれながら)に持っている能力であるとされ、学習や経験によらないものとされています。

愛玩動物(伴侶動物)として長くヒトのそばで生活してきた犬にも備わっているといわれている、このちょっと不思議な「帰巣本能」について詳しくみていきましょう。

犬に帰巣本能があると考えられる理由

実際に犬と身近に接している方を中心に「すべての犬に帰巣本能が備わっているわけではないようだ」という話がきかれることがあります。

実は現在のところ、犬に帰巣本能があるという科学的な確証は得られていません。

しかし、「あると考えられるのではないか」という仮説や、「あると考えたほうが自然な現実的な事例」がいくつか知られています。この章ではそのあたりの話についてみていきましょう。

犬に帰巣本能があると考えられる理由1:実際に帰巣したエピソードが存在する

もっとも有名なものとしては「コリーミックス犬のボビー」の逸話があります。後の章で詳しくご紹介しますが、ボビーは5,000km弱という途方もない距離を6ヶ月かけてたどり、自宅のある土地まで戻ってきました。

また、現在の日本ではあまり聞かなくなりましたが、昭和の時代には「遠くの山に捨てた犬が帰ってきた」という、悲しくも切ない話はよくきかれたものでした。

このように、理由こそ解明されていませんが、偶然などでは説明が難しい状況下で帰巣した事例は少なくありません。

犬に帰巣本能があると考えられる理由2:ナビゲーション能力がある

人間がGPS(全地球測位システム)を使うように、動物もさまざまな感覚器官や外的情報をつかって方向や距離を測る「ナビゲーションシステム」を持っていることが知られています。

他の動物の事例では、太陽、月、地磁気などを感知して利用しているということが研究されていますが、犬は磁覚を有していることが知られています。

犬に帰巣本能があると考えられる理由3:地磁気による優れた方位感覚がある

帰巣本能との関係は解明されていないものの、犬には磁気を感知する能力があることが、海外の研究によりで明らかになってきています。

2013年に発表されたチェコとドイツの研究では、2年間にわたる観察・記録により「身体を南北の軸に沿わせて排便する」という行動が発見されています。

また2016年には、ドイツの研究チームによって「犬の眼球内の錐体細胞に、磁気を感知するタンパク質が存在している」ということが確認されました。

いずれの研究も帰巣本能と磁覚の関係は明らかになっていませんが、犬が遠距離移動する際に地磁気を利用している可能性があるのではないかともいわれています。
犬は地球の磁場の小さな変動に敏感です
網膜錐体光受容体のクリプトクローム1は哺乳類における新しい機能的役割を示唆している

帰巣本能の証明?実際にあった犬の帰巣事例4つ

それでは、実際に犬が帰巣した事例を4つみていきましょう。全て海外の事例ですが、いずれも日本でもよく飼われているポピュラーな犬種です。

彼らはなぜ帰ってきたのか、どうして過酷な環境下で歩き続けたのか、すべて帰巣本能によるものなのか、など、いまもって謎が多いエピソードの数々をどうぞご覧ください。

犬の帰巣事例1:コリーミックスのボビー

コリーのミックス犬ボビーは、生後6ヶ月の子犬だった1923年の夏、家族と夏の休暇に向かったインディアナ州のウォルコットで車から飛び出し、迷子になりました。

家族は新聞に広告を出したりと手を尽くしましたが、ボビーを見つけることができないまま、オレゴン州シルバートンの自宅へと帰路につかざるを得ませんでした。

ところが迷子から半年後の2月、ボビーは約4,800kmの距離を自力で歩き抜き、家族の元へ帰り着いたといいます。

中~大型犬と思われるボビーは、人間の年齢でいうと当時まだ10代の若い犬です。しかも迷子になった時はほんの幼犬だったため、視覚や嗅覚の記憶の蓄積も少なかった可能性があります。

ボビーの計算上の1日の平均移動距離は約26kmです。途中で山越えも必要という厳しい地理、また冬という気候条件の中、ボビーを歩かせ続けた要因はなんだったのでしょうか。

これが帰巣本能の証明だとは言えませんが、彼を踏破へと導いたものの正体がとても気になるエピソードです。

犬の帰巣事例2:ラブラドールレトリバーのタフ

イエロー・ラブラドールレトリバーのタフのエピソードは1996年のことです。飼い主が酒場で呑んでいる数時間の間に、タフは繋がれていた鎖から抜けて行方不明になりました。

飼い主はチラシも作り、目撃情報のあった付近を探したもののタフはなかなか見つかりませんでした。そんなタフが最終的に発見された地点は少し意外な場所でした。

タフは自宅から4.9kmの地点、酒場から自宅方向に30km弱も移動していたところを発見されています。

酒場から発見地点まで移動するにはセントジョンズ川を渡る必要があるのですが、川は流れは穏やかながら、川幅が広いことで知られています。

橋のひとつを渡った事も考えられますが、いずれにせよ、タフは平坦ではない道程を経て自宅へ向かったことになります。

タフの場合は、帰巣本能以外の後天的記憶などを使って戻ろうとした可能性もありますが、「帰巣したい」という意思の源は果たしてどこにあったのでしょうか。

犬の帰巣事例3:ビーグルのレーザー

ビーグル犬のレーザーが犬の保護団体から家庭に引き取られ、カナダ南部の都市ウィニペグで新しい暮らしを始めたのは2010年のことでした。

引き取られてから約1ヶ月後の5月、一家は自宅から80km離れたウィニペグ湖畔に外出したのですが、その際、レーザーが花火の音に驚いて走り出し、行方不明となりました。

必死の捜索にも関わらずなかなか見つからなかったレーザーですが、それから約6週間後に発見されました。引き取られた家から2kmほど離れた校庭にフラッと現れたレーザーは、一旦シェルターに保護され、そこで出されていた迷子情報との照会を経て、家族との再開を果たしました。

レーザーは80kmの距離を、時間をかけつつも自力で自宅へと戻ってきてました。

レーザーが自分の戻るべき場所として、1ヶ月間幸せに暮らした家族の元を目指したように感じられる逸話ですが、それが帰巣本能なのか偶然なのか、とても気になる話です。

犬の帰巣事例4:エアデールテリアのマックス

中型犬エアデールテリアのマックスは、アメリカ北部のロードアイランド州コベントリーで暮らしていました。

2008年9月のある日、飼い主とマックスは自宅から72km程離れたコネチカット州スターリングをドライブしている時に、不幸にも追突事故に遭ってしまいます。

車がオープンカーだったのが災いし、驚いたマックスは車から飛び降り、森の中に駆け込んで迷子になってしまいます。

さんざん手を尽くしても見つからなかったマックスですが、24日後の10月初旬、飼い主が仕事から帰ると、なんとマックスが家の前で待っているのを発見します。

飼い主が驚いたのは、マックスが自ら帰宅したことだけでなく、体重が5kgあまりも減って容貌が変わってしまっていたことだったのだそうです。

オスのエアデールテリアの標準体重は23kg~30kg弱といわれており、マックスがいかに過酷な状況をたどってきたかを如実に示すエピソードです。

愛犬の迷子防止と対処法6つ

普段から愛犬の安全に気を配っていても、突然の事故など想定外のアクシデントで愛犬とはぐれてしまうことも考えられます。

この章では、現在知られている有効な迷子防止策を6つご紹介します。あなたの愛犬に合った、もしもの時の備えを再確認してみてはいかがでしょうか。

愛犬の迷子防止と対処法1:迷子札やGPSをつける

帰巣本能が弱いかな?という、万が一はぐれてもマイペースなタイプの愛犬にはぜひつけておきたいのが以下の2つです。

迷子札は、簡易に導入でき一見して第三者からもわかりやすい反面、首輪が抜けてしまったり、汚損や紛失したりなど確実性に弱い面があるため、他の対策も併用すると安心です。

GPSは、迷子直後など保護されていない早い段階や、愛犬が人目につかない場所にいる場合などに居場所を特定できるのが強みです。

GPSは導入費用がかかることと、追跡するアプリによっては導入後のランニングコストもかかってくる場合があります。

また、首輪に付けた場合に機器を落としたりなどの危険性も否定できず、やはり別の手段との併用が安心です。

愛犬の迷子防止と対処法2:マイクロチップを装着する

マイクロチップは、体内に埋め込まれたICチップ内の15桁の数値を元に、愛犬の身元を照合することができます。

保健所や各種施設などで保護された場合にはとても有効な手段です。しかしその反面、人に保護されていない場合には確認のしようがありません。

ICチップは、動物病院などで注射器を使って埋め込んでもらう必要があります。怖がりの愛犬の場合などは麻酔を使うこともありますが、チップ自体の安全性は高いとされています。

また、マイクロチップの利用には、ICチップ埋め込みの施術費用などが必要です。しかし常に電波を出す機器ではないため電池不要で、サイズも小さく、耐用年数も長くなっています。

愛犬の迷子防止と対処法3:犬を飼っていることを周知する

意外と有効なのが、犬を飼っていることを周囲に知らせることです。

ひとりでいる犬を見かけた時に「❍❍さんちの犬では?」と気に留めてもらえることで、早期の発見や移動経路の特定にも繋がります。

スマホの普及によって、素早く、気軽に連絡がつくこの時代だからこそ、このオーソドックスな方法の有効度が増しています。

愛犬の迷子防止と対処法4:愛犬の普段の行動パターンを観察する

上の帰巣事例でご紹介した中に、「アクシデントに驚いて闇雲に走り出す」という愛犬の例が複数ありました。

花火や暗闇、落雷、地震など、特定のシーンで落ち着きをなくす愛犬は多く、行方不明事故の中でもかなりの割合にのぼります。

アクシデント以外にも、発情期や旅行先など特定のシーンで落ち着かなくなることもありますし、いなくなる直前に特異な行動を見せることもあります。

普段から注意深く愛犬を観察することで、迷子を事前に防げると互いに安心です。

愛犬の迷子防止と対処法5:柵や塀の設置

柵や塀の利用は、物理的に移動を制限するのみならず、外部からの視覚的刺激を減らす効果もあります。

窓から見えるよその犬や人などに興奮してしまうような場合など、愛犬自身の落ち着いた生活のためにも有効です。

愛犬の迷子防止と対処法6:リードの種類を変える

リードは、目的によってさまざまな長さがあり、また素材の種類も多く、飼い主や愛犬に合うものを選ぶことが重要です。

飼い主がコントロールしやすいもの、かつ、愛犬の引く強さやかじるクセなどに合わせてリードを用意してあげましょう。

また、愛犬の成長や経年劣化によって強度が足りなくなる場合もありますので、定期的な見直しが有効です。

犬以外の生物が持つ帰巣本能

帰巣本能をもつ生きものは、犬の他にもいるのでしょうか。

帰巣本能をもつ生物の例として、生まれた川に戻ってくる鮭やマス、またアリやハチなどの社会性昆虫、鳥類のなかでは伝書鳩やツバメなどがよく知られています。

いずれも、育児や出産で以前のすみかに戻るために、帰巣本能を持っていると考えられています。

犬以外の生物が持つ帰巣本能1:ミツバチ

ミツバチの帰巣本能は、蜜のある場所と巣の場所を行き来するためなどに発達してきました。

ミツバチは、色彩を中心とした視覚情報や太陽の位置(太陽コンパス)などを利用して帰巣していることが、実験や観察で確認されています。そのため、巣から離れている時に巣の位置を移動すると、巣に帰り着くのが困難になります。

しかしその「巣の場所を覚える」という帰巣本能により、人間にとって不都合な場所に作られた巣を駆除しても、遅れて戻ったハチが巣を修復しようとしたりすることがあります。

犬以外の生物が持つ帰巣本能2:ムシクイ

ムシクイはスズメ目に属する鳥の仲間です。ムシクイは「星空コンパス」による帰巣本能を持つことが、プラネタリウムでの実験で確認されています。

そのためムシクイは、星の見えない曇天の日には、目標の方角を定めることができません。

なお、日本にも7属17種のムシクイ類がいるとされていますが、帰巣本能について知られているのは主にアメリカムシクイ科の種類で、日本にいるものとは系統が異なります。

犬以外の生物が持つ帰巣本能3:ハト

「伝書鳩」に代表されるハトの帰巣本能はとても有名です。かつてはその帰巣性の高さから、使役動物として世界的に利用されてきました。

ハトの帰巣本能は、太陽コンパス、地磁気の他、臭覚や低周波音も利用しているのではないかといわれています。

使役動物としての役目を終えた現代も、ハトの帰巣性は「鳩レース」と娯楽に形を変え、楽しまれています。鳩レースのハトは、2日間で1000km以上の距離を鳩舎に向かって移動します。

帰巣本能を過信せず愛犬の迷子対策は万全にしよう

犬の帰巣本能は、個体差や種類による差がかなり大きいといわれています。

あなたの愛犬は、もしもの時に自宅まで戻れるでしょうか。たとえ無事に帰宅したとしても、ひとりきりで歩き通す身体的なダメージやストレスは計り知れないほど大きく、避けられるのなら避けてあげたいと思うのでないでしょうか。

大切な伴侶動物である愛犬の幸せのために、もしもの時の対策を考え、末長く幸せな生活を続けてゆきたいものです。
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