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生きてるシーラカンスに会える水族館はある?展示を行っている場所や生態も紹介

シーラカンスと聞いて、生きた化石と称されているイメージを抱く方がいるのではないでしょうか。なぜそのように呼ばれているのか知っていますか。

シーラカンスは誕生してから何億年もの間、変わらない姿で生きてる魚です。ほかの魚とは違う、変わった特徴を多く持っています。

発見されてから現在まで、さまざまな研究が行われており、少しずつその生態が明らかになっています。

シーラカンスは何を食べるのか、生きてる姿は今も見ることができるのか、その身は食べられるのか。気になることはたくさんあります。

ここでは、シーラカンスの生態とあわせて、シーラカンスを見ることができる場所も紹介しています。名前は知っているけど詳しく知らないという方は、ぜひチェックしてみてください。

そもそもシーラカンスはどんな魚?

シーラカンスは、水深150〜700メートルに住む深海魚です。

シーラカンスは、3億5000年ほど前までの化石しかみつかっておらず、とうの昔に絶滅したと考えられていましたが、まだシーラカンスが生きてることに世界中が衝撃を受けたことでしょう。

さらに、3億5000年ほど前と変わらぬ姿で生きてることから、生きた化石と呼ばれています。環境がほとんど変化しない深海で生きていることが、長い間姿が変わらない理由といわれています。

シーラカンスは、シーラカンス目という分類の総称です。これまで約26種類に分類されていますが、生きてるシーラカンスは2種類ほどしか確認されていません。

生息している地域

生きてるシーラカンスは、南アフリカ、コモロ諸島、タンザニア、インドネシアの近海の深海でみつかっています。日本ではみつかっていませんが、日本にいないとは言い切れません。

深海の環境は世界中と比較しても近しいようです。日本の深海を漂っているかもしれないと考えるとわくわくしますね。

現在確認されている生息域は海水域のみですが、化石は淡水域でもみつかっています。深海は、環境が変化することはほとんどありません。それに対し、淡水などの浅瀬は、地殻変動などの環境の変化を受けやすいといえます。

淡水域などに住んでいたシーラカンスは、このような自然環境の変化についていけずに絶滅したと考えられています。

体の大きさや特徴

通常、体長は2メートル以上、体重は90kgほどに成長します。絶滅種では、復元すると3メートルになった個体もいるようです。人間と比較してもかなり大きいことがわかります。

魚類に分類されるシーラカンスですが、ほかの魚と違った特徴をいくつか持っています。

魚類は脊椎動物ですが、シーラカンスには背骨がありません。脊柱という、油のようなものが詰まった管が頭から尾まで通っていて、これが背骨の代わりになっています。脊椎は、ギリシャ語でシーラカンスといいます。

シーラカンスといえば、足のようにのびる胸びれと腹びれが印象的です。ひれには、ほかの魚にはない大きな骨と関節があります。この立派なひれは、魚類から両生類に進化するときの名残だという研究者が多いようです。

また、シーラカンスには肋骨がありませんが、厚いウロコが身体を守っているといわれています。

エサや食べ方

シーラカンスは食事の仕方も特徴的で、逆立ちして食事をします。

頭の形によって、脳と視力が著しく退化しています。それをカバーするために、rosal器官と呼ばれる部分があります。ほかの生物が発する微弱な電流を感知し、隠れた生物を探し出して捕まえるときに用い、逆立ち捕食にも役立っているようです。

シーラカンスの口は、前部と後部に分かれており関節部は蝶つがい状になっています。これにより、大きく開けることができます。分厚い筋肉束があるため、かむ力は強力です。

基本的には、深海にすむ魚やイカを食べるようですが、解剖された個体には、50センチメートルほどのアナゴやサメが丸ごと入っていたものもあります。

寿命の目安

これまでの研究では、シーラカンスの寿命は20年ほどと考えられていました。しかし、実は100年ほど生きることが判明しました。

シーラカンスのウロコには、輪条という石灰化した縞模様があります。毎年この模様が大きくなっていくので、木の年輪のように時間の経過を表すと考えられています。

研究チームは輪条を観察し、この新たな発見は2021年頃に科学雑誌に掲載されました。さらに、子宮の中で5年ほど過ごすこともわかりました。

シーラカンスは、この長く生きてる期間のなかで、生まれて50年ほどまでは成魚と呼ばないそうです。動物の成熟時期は、身体が成長しきったかどうかと、生殖が可能かで判断されます。シーラカンスの成熟までの期間は、40〜70年ほど。平均して55年ほどかかります。

急速に成長すると思われていましたが、非常にゆっくりと成長するようです。

生きてるシーラカンスを見られる水族館はある?

逆立ち捕食や特徴的な見た目など、シーラカンスには気になる部分がたくさんあります。実際にその姿を見てみたくなりますよね。

残念ながら、生きてるシーラカンスは水族館で見ることはできません。シーラカンスは、商業ベースでの展示が禁止されています。

シーラカンスは絶滅のおそれがあるため、商業目的の取引は禁止です。学術目的の取引は可能ですが、輸出入はウロコ1枚まで厳しく制限されているようです。

シーラカンスの標本が見られる水族館


生きてるシーラカンスは世界的に見てもなかなかお目にかかれるものではありません。また、シーラカンスはその特殊な生態と大きさから、飼育・展示は乗り越えるべき問題が多いともいえます。

多くの海洋生物を展示している水族館でも、生きてるシーラカンスを見ることはできませんが、標本がある水族館がいくつかあります。生きてるものではありませんが、シーラカンスの標本はとても貴重です。

日本で、貴重な標本が展示されている水族館を、それぞれの水族館の特徴とあわせて紹介します。水族館ごとに展示の工夫があり、比べてみると面白いかもしれません。

沼津港深海水族館

静岡県にある、深海をテーマにした水族館です。水族館の目の前にある駿河湾は最深約2500メートルもあります。実際に、メガマウスなどの古代魚が生息しています。

沼津港深海水族館のシーラカンスミュージアムと名付けられた展示スペースでは、3体の剥製標本と、2体の冷凍標本が展示してあります。

海中で泳ぐ姿を捉えた映像や、CTスキャンを用いて立体映像の再現など、この水族館に行くと生きてるシーラカンスに会った気分になれるでしょう。

アクアマリンふくしま

福島の海の象徴である、黒潮と親潮が出会う潮目をテーマにしている水族館です。ここでは、2体のシーラカンスの標本を見ることができます。この2体は異なる種類のシーラカンスで、同時に見られる水族館はここだけです。

近年では、アフリカのシーラカンス保全プログラムの連携、インドネシアシーラカンス保全プログラムの確立などさまざまな活動が行われています。

ROVカメラという自走式の水中カメラを使って、シーラカンスだけでなく、福島の海の調査にも一役買っているようです。シーラカンスとともに福島の海について知ることができる水族館です。

市立しものせき水族館 海響館

ふぐの取扱量で有名な、山口県下関市にあります。下関の成り立ちが海と深く関わっていることから、海のいのち・海といのちをコンセプトに掲げる水族館です。

過去には、シーラカンスの日本上陸50周年を記念した企画展も行われました。展示に至るまでの裏話がホームページに掲載されており、興味深い内容です。

特徴的な展示も魅力のひとつです。潮の流れを再現した水槽など、見どころがたくさんあります。また、シロナガスクジラの全身骨格標本が展示されています。ここでしか見られない展示を楽しみましょう。

国立科学博物館

水族館ではありませんが、ここでもシーラカンスの化学標本を見ることができます。

1877年頃に創立された日本でも歴史ある博物館です。国立唯一の総合科学博物館として自然史や科学技術史に関する展示を見ることができます。展示だけでなく、調査研究や学習支援などの活動が行われており、さまざまな分野の興味深い内容を多く取り扱っています。

シーラカンスは地球館というスペースに展示されていますが、植物園などの付属施設がいくつかあるので興味のあるものを見て回るのもよさそうです。

濃い内容の展示を見て回るうちに、その時代に浸ることができます。水族館とは違った楽しみ方ができる場所です。

水族館で標本を見る際に知っておくといいシーラカンスの豆知識


生きてるシーラカンスに会うことは難しいですが、国内でも、水族館などでシーラカンスの標本が見られることが分かりました。では、実際に水族館でシーラカンスを見る前に、もう少しシーラカンスについて知っておきましょう。

実は、シーラカンスの日というものが存在します。1952年12月20日に捕獲されて初めて学術調査が行われました。以降、12月20日はシーラカンスの日とされています。

また、シーラカンスは世界一まずい魚であるという記録が残っています。身体のほとんどが、食べても消化できない成分でできているためです。実際にどんな味なのか、少し気になってしまいますね。

ほかにも、シーラカンスに関する豆知識がいくつかあります。

出典:12月20日【シーラカンスの日】|株式会社琉美不動産
参照:https://www.ryubi-estate.co.jp/blog/entry-330829/

シーラカンスと名前

シーラカンスは、シーラカンス目という分類の総称であるため、正式名称は別に存在します。

最初に発見された個体の学名は、ラティメリア・カルムナエです。のちに見つかった個体はラティメリア・メナドエンシスといい、現在確認されている生きてるシーラカンスはこの2種類です。

生きてるシーラカンスが多く発見されているコモロ諸島では、ゴンベッサと呼ばれています。

コモロ諸島では、1年に数匹釣りあげられており、まずくて食用にもならないことから、食えない魚・使えない魚という意味でした。しかし、現在はシーラカンスを釣ると高く買ってもらえるので、幸せを呼ぶ魚という意味でゴンベッサと呼ばれているそうです。

発見の歴史

生きてるシーラカンスが最初に発見されたのは、1938年頃です。

南アフリカのチャルムナ川の沖で、イーストロンドン博物館のコートネー・ラティマー女史が発見しました。これにちなんで、ラティメリア・カルムナエという学名がつけられています。

絶滅したと考えられていたシーラカンスが目の前で生きてる光景は、たいそう驚きだったことでしょう。

2匹目は、1952年頃にコモロ諸島でラティメリア・メナドエンシスが発見されました。1匹目の発見場所からは約3000キロメートルも離れています。この種は、発見場所にちなんで日本ではインドネシアシーラカンスとも呼ばれています。

まだ見つかっていない場所で、深い海を悠然と漂っているのかもしれませんね。

近年捕獲事例が増えたわけ

絶滅危惧種になっているにもかかわらず、シーラカンスが捕獲されるケースが増えており、再び絶滅の危機に直面しているといわれています。

マダガスカル周辺では数十年で100匹以上が捕獲された可能性があります。2010年頃には、なんと1週間で1ダースという報告もあったようです。なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか。

このような事態には、サメの需要と関係があるとされています。ヒレや油など、サメの需要が世界中で高まっています。サメの漁に使われる刺し網は、深い海に適しており、そこにシーラカンスがかかってしまうようです。

また、マダガスカルにはシーラカンスの保護に関する積極的なプロセスがなかったことも原因と考えられています。

シーラカンスの発見には役立ってきましたが、貴重な種がこれからも残るように大切にしていきたいものです。

生きてるシーラカンスのかわりに標本のシーラカンスに会いに行こう


大昔、恐竜の時代に絶滅したと考えられていましたが、長い年月を経て変わらない姿で生きてるところを発見されたシーラカンス。現在どのくらいいるのか、個体数ははっきりと分かっていません。研究が進められていますが、まだまだ解明されていない部分が多いのも現状です。

足のようなヒレは、陸に上がろうとしたからなのか。なぜ深海に戻ったのか。これから先、どのような新しい発見があるのか興味が湧きます。

シーラカンスを知ることで、海の歴史や生命の神秘に触れることができます。まずは、標本のシーラカンスに会いに行ってみてはいかがでしょうか。わくわくする新しい発見があるかもしれません。
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