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高齢犬・高齢猫が突然歩けなくなったら|原因・危険サイン・家庭でできる介護と治療ガイド【獣医師監修レベル】

更新日:2025年12月11日

1分でわかるこの記事の要約 高齢犬猫の歩行困難は、加齢だけでなく治療可能な関節や神経の病気が原因の可能性があり、早期発見が重要です。 変形性関節症などの関節トラブルや椎間板ヘルニアなどの神経トラブル、筋力低下や内臓疾患が […]
1分でわかるこの記事の要約
  • 高齢犬猫の歩行困難は、加齢だけでなく治療可能な関節や神経の病気が原因の可能性があり、早期発見が重要です。
  • 変形性関節症などの関節トラブルや椎間板ヘルニアなどの神経トラブル、筋力低下や内臓疾患が主な原因として挙げられます。
  • 寝起きがぎこちない、段差を嫌がる場合は関節痛を、足を引きずる、腰が抜ける場合は神経麻痺を疑うサインです。
  • 激しい痛みや麻痺、呼吸困難が見られる場合は緊急性が高く、夜間や休日でも直ちに動物病院を受診してください。
  • 家庭では滑り止めや段差解消、温めケア、排泄補助が有効で、獣医師と相談し介護用品やサプリメントも活用しましょう。
昨日まで元気に走り回っていた愛犬・愛猫が、突然歩けなくなってしまったら…その姿を目の当たりにすると、飼い主様は胸が張り裂けそうな不安に駆られることでしょう。「もう歳だから」と諦めてしまう前に、その症状の裏に隠された原因を正しく理解することが、愛するペットのQOL(生活の質)を維持するために何よりも重要です。その歩行困難は、単なる老化ではなく、治療可能な関節や神経の病気が発するサインかもしれません。

この記事では、高齢の犬や猫が突然歩けなくなる主な原因から、危険な症状の見分け方、ご家庭で今日から始められる具体的な介護ケア、リハビリ方法まで、獣医療の視点から詳しく解説します。

老犬・老猫が突然歩けなくなる3つの主な原因

シニア期に入った犬や猫の歩行に異変が見られたとき、考えられる原因は一つではありません。大きく分けて「①関節のトラブル」「②神経のトラブル」「③その他の要因」の三つが挙げられます。それぞれの特徴を理解し、どの可能性が高いのかを見極めることが、適切な対応への第一歩となります。

原因①:関節のトラブル(変形性関節症など)

長年体を支えてきた関節は、年齢と共に軟骨がすり減り、炎症を起こしやすくなります。これが「変形性関節症」と呼ばれる状態で、高齢の犬や猫に非常によく見られる病気です。

  • 初期症状: 寝起きに少し動きが硬い、散歩に行きたがらない、段差を避けるなど、些細な変化から始まります。
  • 特徴: 痛みがあるため、特定の足を引きずる、足をかばうように歩くといった様子が見られます。痛い部分を触ろうとすると嫌がったり、怒ったりすることも。
  • リスクが高い子: 特に大型犬や肥満傾向のペットは関節への負担が大きく、発症リスクが高いと言えます。

このタイプの歩行困難は、ゆっくりと進行することが多いですが、急な気温の変化や過度な運動によって痛みが悪化し、突然歩けなくなったように見えることもあります。

原因②:神経のトラブル(椎間板ヘルニアなど)

神経系の異常は、より深刻で緊急性の高い症状を引き起こすことがあります。代表的な病気が「椎間板ヘルニア」です。

  • 仕組み: 背骨の間にあるクッション(椎間板)が飛び出し、神経を圧迫することで、激しい痛みや麻痺を引き起こします。
  • 症状: 特に後ろ足に症状が出やすく、足がもつれる、ふらつく、腰が抜けたように立てなくなる、後ろ足を引きずって歩くといった様子が見られます。
  • 重度の場合: 完全に後ろ足が麻痺し、自力での排尿や排便が困難になることもあります。

椎間板ヘルニアは、ダックスフンドやコーギーなどの犬種に多いとされていますが、猫や他の犬種でも発症します。症状が突然現れ、急速に悪化することが特徴で、一刻も早い動物病院での診断と治療が求められます。他にも、脊髄梗塞や変性性脊髄症といった病気も、同様の神経症状を引き起こす原因となります。

原因③:筋力低下や病気などその他の要因

関節や神経に明らかな異常がなくても、加齢による全体的な筋力の低下(サルコペニア)によって、踏ん張りがきかなくなり、歩行が不安定になることがあります。

また、心臓病や腎臓病といった内臓疾患が進行し、全身が衰弱することで元気がなくなり、歩く気力を失ってしまうケースも少なくありません。この場合、歩けないだけでなく、食欲不振や嘔吐、呼吸が苦しそうといった他の症状を伴うことが多くあります。

さらに、飼い主が気づかないうちに高いところから落ちて捻挫したり、家具に体をぶつけて打撲したりといった怪我が原因で、痛みのために歩けなくなることも。シニアのペットは骨ももろくなっているため、些細なことでも骨折につながる可能性があります。


危険サインを見逃さない!症状の見分け方チェックリスト

愛するペットの異変にいち早く気づくためには、日頃の観察が不可欠です。「関節の痛み」と「神経の麻痺」、それぞれのサインを見分けるためのチェックリストをご活用ください。一つでも当てはまれば、早めに獣医師へ相談しましょう。

「関節の痛み」を疑うサイン

  • 寝起きや長時間座った後の立ち上がりが遅い、動きがぎこちない
  • 階段やソファなど、段差の上り下りを嫌がるようになった
  • 散歩の途中で座り込む、すぐに帰りたがる
  • 歩くときに頭を上下に振る(痛い足に体重をかけないようにするため)
  • 特定の足をしきりに舐めたり、噛んだりしている
  • 体を触られるのを嫌がる(特に腰や足の付け根)
  • 以前よりもジャンプをしなくなった
  • 歩き方が変わった、足を引きずるようになった

これらの症状は、天候が悪い日や体が冷えているときに悪化する傾向があります

「神経の麻痺」を疑うサイン

  • 後ろ足に力が入らず、腰が砕けるように崩れ落ちる
  • 足先を地面に擦るようにして歩く(爪が削れていることがある)
  • 足の甲を地面につけて歩く(ナックリング)
  • 千鳥足のようにふらつき、まっすぐ歩けない
  • 体の片側だけが傾いている、同じ方向にぐるぐる回る
  • 突然「キャン!」と鳴き叫び、その後ぐったりして動かない
  • 震えが止まらない
  • 排尿や排便のコントロールができていない、失禁する

これらの症状が見られた場合は、神経に深刻なダメージが及んでいる可能性があります。様子を見るのではなく、直ちに動物病院を受診してください。


【緊急】すぐに動物病院へ行くべき危険な症状

以下の症状が見られる場合は、命に関わる状態や、後遺症が残る可能性が非常に高い危険なサインです。夜間や休日であっても、救急対応している動物病院を探して、すぐに連れて行きましょう。

  • 激しい痛みで絶えず鳴き叫んでいる、触ると絶叫する
  • 完全に足が動かず、麻痺している
  • 呼吸が速く、苦しそうにしている(ハアハアと浅い呼吸を繰り返す)
  • ぐったりして意識が朦朧としている、呼びかけに反応しない
  • 体が冷たい、歯茎の色が白い(ピンク色でない)

これらの症状は、重度の椎間板ヘルニアや脊髄梗塞、内臓疾患の急激な悪化などが考えられます。一刻を争う事態であり、迅速な診断と治療がペットの未来を左右します


歩行困難な高齢ペットへ。家庭でできる介護とケア

診断を受け、治療方針が決まった後も、ペットが快適に過ごせるよう、ご家庭での介護やケアが非常に重要になります。飼い主様にできる具体的なサポート方法をご紹介します。

1. まずは安静と環境整備から

  • 滑り止め対策: フローリングは足腰に大きな負担をかけます。滑り止めのマットやカーペットを敷き、ペットが移動する範囲を安全にしましょう。
  • 段差の解消: ソファやベッドへの上り下りのために、ペット用のスロープやステップを設置し、関節への衝撃を和らげます。
  • 快適な寝床: 体圧を分散できる低反発のベッドやクッションを用意し、床ずれ(褥瘡)を防ぎます。特に寝たきりの場合は、2〜3時間おきに体の向きを変えてあげる(寝返り)ことが大切です。

2. 痛みを和らげるケア(温め・マッサージ)

慢性的な痛みを抱えるペットのために、家庭でできる緩和ケアも積極的に取り入れましょう。

  • 体を温める: 人肌程度に温めた蒸しタオルやペット用のホットパックを、痛む関節や腰に優しく当ててあげると、血行が促進され筋肉のこわばりがほぐれます。(※低温やけどに注意)
  • マッサージ: 獣医師の指導のもと、優しくマッサージを行うこともおすすめです。筋肉を揉みほぐしたり、関節をゆっくりと曲げ伸ばししたりすることで、痛みの緩和と関節可動域の維持につながります。

3. 食事と排泄のサポート

  • 食事の工夫: 食器は少し高さのある台の上に置き、楽な姿勢で食べられるようにします。食欲が落ちている場合は、フードを少し温めて香りを立たせたり、ウェットフードを混ぜたりして食欲を刺激しましょう。
  • 排泄の補助: 歩行補助ハーネスが非常に役立ちます。体を支えてあげることで、ペット自身の力で排泄するのを助けることができます。寝たきりの場合は、おむつやペットシーツを活用し、常に清潔な状態を保つことが皮膚トラブルの予防になります。

歩行を助ける介護用品(ハーネス・車椅子)とサプリメント

現代では、シニアペットの生活をサポートする便利な補助具やサプリメントが数多くあります。上手に活用し、ペットと飼い主様双方の負担を軽減しましょう。

歩行補助ハーネスの選び方と使い方

歩行補助ハーネスは、足腰が弱くなったペットの体を支え、散歩や排泄、移動をサポートする重要アイテムです。後ろ足用、全身用など様々な種類があるため、ペットの症状や体のサイズに合わせて選びましょう。体にフィットし、皮膚が擦れない素材であることがポイントです。

犬用車椅子という選択肢

後ろ足が麻痺してしまった場合でも、犬用車椅子を使えば、再び自分の力で散歩に出かけることが可能になります。自立心を促し、運動不足の解消や気分転換にもつながる素晴らしい補助具です。導入のタイミングは獣医師と相談し、レンタルで試してみるのも良いでしょう。

関節ケアにおすすめのサプリメント・療法食

  • 成分: グルコサミン、コンドロイチンは軟骨の構成成分です。
  • 成分: オメガ3脂肪酸(EPA、DHA)は抗炎症作用が期待できます。

アンチノールやコセクインなどが有名ですが、様々な製品があります。サプリメントはあくまで栄養補助食品です。使用する際は必ずかかりつけの獣医師に相談し、ペットの状態に合ったものを選びましょう。


動物病院での診断と治療法

どのような検査が行われるか

問診、視診、触診、神経学的検査に加え、原因を詳しく調べるために以下の検査が行われることがあります。

  • レントゲン検査: 骨や関節の状態を確認します。
  • CT検査・MRI検査: 椎間板ヘルニアなど、神経系の異常をより精密に診断します。

主な治療法の選択肢

  • 内科治療: 変形性関節症などに対して、鎮痛剤や消炎剤といった薬物療法が中心となります。体重管理や、レーザー治療、鍼治療、リハビリテーションも有効です。
  • 外科手術: 重度の椎間板ヘルニアで、内科治療に反応しない場合や麻痺が進行している場合に、神経の圧迫を取り除くための手術が選択されることがあります。

どのような治療法が最適か、獣医師と十分に話し合い、ペットにとって最善の道を選択しましょう。


まとめ

愛するペットが突然歩けなくなる現実は、飼い主様にとって計り知れない衝撃です。しかし、それは決して終わりではありません。原因は加齢だけでなく、治療可能な病気が隠れていることも多く、早期発見と適切なケアがペットの未来を大きく変えます。

日頃からペットの小さな変化に気づき、危険なサインを見逃さないことが重要です。そして、環境整備やマッサージ、介護用品の活用など、ご家庭でできることはたくさんあります。何よりも大切なのは、一人で抱え込まず、些細なことでもかかりつけの獣医師に相談すること。 あなたの深い愛情と適切なケアが、シニア期のペットの穏やかで快適な毎日を支える最大の力となるのです。


よくある質問(FAQ)

Q1: 老犬が歩けないけど食欲はあります。様子を見ても大丈夫?

A1: いいえ、安心はできません。犬は痛みを隠す習性があるため、食欲があっても関節や神経に深刻な問題を抱えている可能性があります。特に、突然歩けなくなった場合は、椎間板ヘルニアなどの緊急を要する病気の可能性も。治療のタイミングを逃し、症状が悪化する危険性があるため、できるだけ早く動物病院を受診してください。

Q2: 自宅でリハビリをしたいのですが、注意点はありますか?

A2: ご自宅でのリハビリは筋力維持に有効ですが、やり方を間違えると逆効果になることもあります。必ず獣医師や理学療法士の指導のもとで行ってください。 注意点は、①ペットが嫌がることは無理強いしない、②痛みを見せたらすぐに中断する、③短い時間から始め徐々に慣らす、④滑らない安全な場所で行う、などです。優しいマッサージや、無理のない範囲での関節の曲げ伸ばし運動から始めましょう。

Q3: ペットの介護にかかる費用はどのくらいですか?

A3: 費用はペットの状態やケア内容によって大きく異なります。おむつ等の消耗品代、介護用ベッドやハーネス等の初期費用に加え、定期的な診察や薬代、療法食の費用などが継続的に必要です。犬用車椅子や専門的なリハビリを行う場合はさらに費用がかかります。事前にかかりつけの獣医師に相談し、おおよその目安を確認しておくと安心です。

この記事のまとめ
  • 高齢犬猫の歩行困難は、治療で改善可能な病気が隠れている場合が多く、早期発見と獣医師への相談が不可欠です。
  • 関節炎や椎間板ヘルニア、筋力低下など原因は多岐にわたり、異変を感じたら危険サインチェックリストで確認しましょう。
  • 自宅での介護では、滑り止めや段差解消、温めケア、排泄補助、適切な食事サポートが重要になります。
  • 歩行補助ハーネスや犬用車椅子、獣医師と相談した上でのサプリメント活用も、ペットのQOL向上に繋がります。
  • 一人で抱え込まず、獣医師と連携しながら、愛するペットに寄り添うことが快適なシニアライフを支える鍵となります。

初回公開日:2025年12月11日

記載されている内容は2025年12月11日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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