犬猫の夜鳴き・徘徊は認知症のサイン? チェックリスト・対策・動物病院への相談ポイントを徹底解説
更新日:2025年12月11日
- 犬や猫の夜鳴きや徘徊は認知症のサインの可能性があり、早期発見と適切な対策が重要です。
- 自宅でのチェックリストを活用し、異変を感じたら他の病気の可能性も含め動物病院に相談しましょう。
- 夜鳴きや徘徊には、環境整備、生活リズムの改善、安心感を与える接し方などが有効な対策です。
- 獣医師に相談することで、投薬やサプリメント、療法食といった専門的な治療も検討できます。
- ペットの介護は長期戦であり、飼い主自身のストレスケアと、完璧を目指さない心構えが大切です。
犬と猫の認知症(認知機能不全症候群)とは?
「ペットの認知症」は、正式には「認知機能不全症候群(CDS)」と呼ばれ、加齢によって脳の機能が低下し、様々な行動変化が現れる状態を指します。人間と同じように、犬や猫も高齢になると発症する可能性があり、その症状はゆっくりと進行していくのが特徴です。
早期にサインに気づき、適切なケアを始めることが、ペットと飼い主双方の負担を軽減し、穏やかな毎日を送るための鍵となります。まずは、ご自宅でできる簡単なチェックリストで、愛犬・愛猫の様子を確認してみましょう。
自宅でできる簡単チェックリスト|行動変化を見逃さない
以下の項目に当てはまるものが増えてきたら、認知機能低下のサインかもしれません。複数該当する場合は、他の病気の可能性も含めて一度動物病院で相談することをおすすめします。
自宅でできる簡単チェックリスト
- 【昼夜逆転】: 夜中に起きて活動し、昼間は寝てばかりいる。
- 【徘徊・旋回】: 円を描くように同じ場所をぐるぐる回る、目的もなく家の中を歩き続ける。
- 【認識低下】: 家族を認識できない、名前を呼んでも反応が鈍い・無視する。
- 【トイレの失敗】: これまでできていた場所でトイレができなくなる。粗相が増える。
- 【食欲の変化】: 異常に食欲が増す、またはご飯に興味を示さなくなる。
- 【空間認識の低下】: 家具の隙間や部屋の隅に入り込み、後退できずに出られなくなる。
- 【夜鳴き・無駄吠え】: 理由もなく、特に夜間に大きな声で鳴き続けたり、吠え続けたりする。
- 【反応・関心の低下】: おもちゃで遊ばない、散歩に行きたがらないなど、好きだったことへの興味を失う。
- 【睡眠パターンの変化】: 眠りが浅い、睡眠時間が極端に長くなる、または短くなる。
注意点:これらの行動変化は、認知症だけでなく、他の病気が原因で起こることもあります。例えば、関節の痛みで粗相が増えたり、聴力の低下で反応が鈍くなったりすることも。自己判断せず、気になることがあれば必ず獣医師に相談しましょう。
認知症の犬・猫によく見られる行動とその理由
なぜ「ぐるぐる回る」のか?
認知症の症状の中でも、同じ場所を「ぐるぐる回る」(旋回運動)という常同行動は、飼い主さんにとって特に心配なサインの一つです。この行動の背景には、主に2つの理由が考えられます。
- 方向感覚・空間認識能力の低下: 自分がどこにいるのか、どちらへ進めばよいのかが分からなくなり、不安から同じ行動を繰り返してしまいます。
- 脳の機能障害: 脳の特定の領域に障害が起きることで、自分の意志とは関係なく体が動いてしまうことがあります。
ただし、この「ぐるぐる回る」行動は、脳腫瘍や前庭疾患といった他の深刻な病気のサインである可能性も否定できません。これらの病気は平衡感覚を司る神経に異常をきたし、旋回運動を引き起こします。認知症と決めつけず、このような特異な行動が見られたら、必ず動物病院で詳しい検査を受け、原因を特定してもらいましょう。
飼い主さんの睡眠を守る!夜鳴き・徘徊への具体的な夜間対策
ペットの認知症で最も飼い主さんを悩ませるのが、夜鳴きや徘徊による睡眠不足です。飼い主さんが心身ともに健康でいることが、結果的に愛犬・愛猫への質の高いケアにつながります。ここでは、すぐに実践できる具体的な夜間対策をご紹介します。
すぐに試せる!夜鳴きの原因と対策5選
夜鳴きの原因は一つではありません。ペットが何に不安や不快を感じているのかを見極め、一つずつ対処していくことが改善への近道です。
1. 安心感を与える
- 触れ合いの時間: 認知機能の低下はペットに強い不安を与えます。寝る前に優しく声をかけ、ゆっくり体を撫でるなど触れ合いの時間を設けましょう。「大丈夫だよ」という気持ちが伝わることで、安心して眠りにつきやすくなります。
2. 快適な環境を整える
- 環境の見直し: 寝床の心地よさ、室温、湿度を見直しましょう。体にフィットするベッドや、飼い主さんの匂いがついたタオルを置くのも効果的です。足元を照らす程度の常夜灯をつけてあげましょう。
3. 生活リズムを整える
- 体内時計の調整: 昼夜逆転は夜鳴きの主な原因です。日中に適度な刺激を与え、体内時計を整えましょう。天気の良い日は日光浴をさせたり、短い散歩を複数回に分けたりするのがおすすめです。
4. トイレ環境を見直す
- 高齢犬・猫への配慮: 夜中にトイレに行きたくて鳴いている可能性も。高齢になるとトイレが近くなるため、寝床のすぐ近くにトイレを設置したり、ペット用おむつを利用したりするのも有効な手段です。
5. 動物病院に相談する
- 専門家のサポート: 様々な対策を試しても改善しない場合は、我慢せずに専門家を頼りましょう。不安を和らげる薬や、睡眠を助けるサプリメントを処方してもらえることがあります。ペットと飼い主双方のQOLを著しく損なっている場合は、有効な選択肢となります。
徘徊によるケガを防ぐ安全な環境づくり
夜間の徘徊は、思わぬケガのリスクを高めます。特に視力が低下している場合は注意が必要です。家の中を安全な空間にするための工夫を行いましょう。
- 危険箇所をガード: 階段や玄関にはペットゲートを設置します。ストーブやヒーターの周りも柵で囲い、火傷を防ぎましょう。
- 家具の角を保護: 家具の角にコーナークッションを取り付け、衝突時のケガを防ぎます。ペットが挟まりやすい狭い隙間はあらかじめ塞いでおきましょう。
- 床の滑り止め対策: フローリングは滑りやすく、足腰の弱ったペットには危険です。滑り止めのワックスや、コルクマット、カーペットを敷いて歩きやすい環境を作りましょう。
- 行動範囲を限定する: 夜間は一部屋など、安全を確保したスペースで過ごさせるのも一つの手です。その際は、ペットが孤独を感じないよう、飼い主さんの寝室の一角にするなどの配慮が大切です。
認知症のペットとの正しい向き合い方【心のケア】
トイレの失敗を叱ったり、夜鳴きを強い口調でやめさせようとしたりするのは逆効果です。彼らはわざと困らせているのではなく、脳の機能低下によって自分でも行動をコントロールできずにいるのです。ペットが感じている不安や混乱に寄り添い、安心感を与える接し方を心がけましょう。
安心感を与える声かけと触れ合い
認知機能が低下しても、聴覚や嗅覚、触覚は比較的最後まで残ると言われています。これらの感覚に働きかけるコミュニケーションが効果的です。
- 穏やかな声かけ: ペットの視界に入ってから、低く、穏やかなトーンで優しく名前を呼びかけましょう。大きな声は驚かせてしまいます。
- 優しいタッチ: まず飼い主さんの手の匂いをかがせてから、ゆっくりと背中や体を撫でます。マッサージやブラッシングもリラックスにつながります。
- 一貫した対応: 家族全員が同じように優しく接することが大切です。対応にばらつきがあると、ペットが混乱してしまいます。
日中の過ごし方で昼夜逆転を改善
夜間にしっかり眠ってもらうには、日中の過ごし方が非常に重要です。脳と体に良い刺激を与え、心地よい疲労を感じさせることが、健康的な睡眠サイクルへの第一歩となります。
- 日光浴と軽い運動: 日中はカーテンを開けて部屋を明るくし、日光浴の時間を。散歩は、10分程度の短い散歩を日に2〜3回に分けるなど、体に負担のない範囲で行いましょう。
- 脳への刺激: おやつを隠して探させるノーズワークや、簡単な知育トイは脳の活性化に繋がります。昔よくやっていた遊びを取り入れるのも良いでしょう。
- 食事時間の固定: 毎日決まった時間に食事を与えることで生活にメリハリが生まれ、体内時計を整える助けになります。脳の健康をサポートする療法食について獣医師に相談するのもおすすめです。
動物病院で相談する前に準備すべきこと
ペットの行動変化に気づいたら、なるべく早く動物病院を受診しましょう。認知症の症状は、甲状腺機能の異常や関節炎、脳腫瘍など、他の病気が原因の場合もあるため、正確な診断が不可欠です。受診前に情報を整理しておくと、診察がスムーズに進みます。
獣医師に的確に伝えるべき情報
限られた診察時間で状況を正確に伝えるため、以下の点をメモしておきましょう。
- 具体的な症状と開始時期: 「いつから」「どんな行動」が見られるか。「1ヶ月前から、夜中の3時頃に1時間ほど鳴き続ける」など具体的に。
- 行動の動画: 夜鳴きや徘徊、ぐるぐる回る様子などをスマホで撮影しておくと、口頭よりもはるかに正確に状態を伝えられます。
- 一日の生活記録: 睡眠、食事、排泄の時間や回数、活動的な時間帯などを記録した日誌は、診断の大きな助けになります。
- その他の変化: 食欲や飲水量の変化、体重の増減、歩き方など、気になる点はすべて伝えましょう。
認知症の診断と治療の選択肢
動物病院では問診、各種検査を通じて総合的に診断します。認知症と診断された場合、完治させる治療法はまだありません。しかし、投薬やサプリメント、食事療法などを組み合わせることで、症状の進行を遅らせたり、行動を穏やかにしたりすることは可能です。
- 薬物療法: 脳の血流を改善する薬や、不安を和らげる抗不安薬などが用いられます。
- サプリメント: DHA/EPA(オメガ3脂肪酸)や抗酸化物質を含むサプリメントは、脳の健康維持をサポートします。
- 食事療法(療法食): 脳の健康維持をサポートする成分が強化された、認知機能低下に対応した療法食があります。
- リハビリテーション: マッサージや軽い運動は、身体機能の維持だけでなく、脳への良い刺激にもなります。
どのような治療法が適しているかは、ペットの状態によって異なります。獣医師とよく相談し、最適なケアプランを立てていきましょう。
飼い主自身のストレスケアと介護の心構え
ペットの介護は終わりが見えず、精神的にも肉体的にも大きな負担となります。頑張りすぎて飼い主さんが倒れてしまっては元も子もありません。介護は長期戦と捉え、決して一人で抱え込まないでください。
- 完璧を目指さない: 「100点満点の介護」は不要です。「今日はここまでできた」と自分を認め、少しでも楽ができる方法を探しましょう。
- 相談相手を見つける: 家族や友人に話を聞いてもらう、同じ経験を持つ人とSNSで繋がるなど、気持ちを吐き出せる場所を作りましょう。
- 外部サービスを頼る: ペットシッターや老犬・老猫ホームといった選択肢もあります。罪悪感を感じる必要はありません。飼い主さんが休息を取ることは、介護を続けるために不可欠です。
ペットの認知症に関するよくある質問(FAQ)
Q1: 犬の認知症による夜鳴きはいつまで続く?治るの? A1: 個体差が非常に大きく「いつまで」と断言はできません。しかし、本記事で紹介した環境改善や生活リズムの調整、動物病院での治療(投薬やサプリメント)によって、症状が緩和されたり頻度が減ったりするケースは多くあります。終わりが見えない不安は大きなストレスです。つらいと感じたらすぐに獣医師に相談し、飼い主さんの負担を軽減する方法を一緒に探してもらいましょう。
Q2: ペットの認知症は予防できますか? A2: 残念ながら、完全に予防する方法はまだ確立されていません。しかし、発症リスクを下げたり進行を遅らせたりするために日頃からできることはあります。若いうちからの適度な運動、バランスの取れた食事といった基本的な健康管理に加え、知育トイで遊ぶ、抗酸化作用のある成分(サプリ等)を取り入れるなどが、予防につながると期待されています。
Q3: 認知症におすすめのサプリメントはありますか? A3: DHA/EPA(オメガ3脂肪酸)、中鎖脂肪酸、ビタミンEなどの抗酸化物質、イチョウ葉エキスなどが知られています。しかし、ペットの体質や持病によっては合わないこともあります。必ずかかりつけの獣医師に相談し、ペットの状態に合ったものを選んでもらいましょう。自己判断での使用は避けてください。
まとめ
ペットの認知症は、誰にでも起こりうる自然な老化現象の一つです。しかし、早期にサインを発見し、適切なケアを行うことで、その進行を穏やかにし、ペットと飼い主さん双方の暮らしの質(QOL)を維持することは十分に可能です。
夜鳴きや徘徊といった行動変化は、ペットからの助けを求めるサインです。そのサインを見逃さず、まずはチェックリストで状態を確認し、早めに動物病院に相談してください。
この記事で紹介した情報が、あなたが愛するペットとの穏やかでかけがえのない時間を、一日でも長く過ごすための一助となれば幸いです。一人で悩まず、家族や獣医師など専門家の力も借りながら、あなたのペットにとっての最適なケアを見つけていきましょう。
- ペットの認知症は自然な老化現象ですが、早期発見と適切なケアで穏やかな暮らしを維持できます。
- 夜鳴きや徘徊はペットからの重要なサインであり、チェックリスト確認後は速やかに獣医師へ相談しましょう。
- 飼い主は決して一人で介護の負担を抱え込まず、家族や専門家のサポートを積極的に活用してください。
- 安心できる環境整備、規則正しい生活、心のケアが、認知症ペットとの質の高い生活に繋がります。
- 獣医師との連携により最適な治療計画を立て、愛するペットとの残された時間を大切に過ごしましょう。
初回公開日:2025年12月11日
記載されている内容は2025年12月11日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。