犬・猫のしつけで絶対やってはいけない叱り方10選|信頼関係を壊すNG行動とは?
更新日:2025年12月23日
- 感情的な叱り方はペットとの信頼関係を壊し、問題行動をさらに悪化させる可能性が高いです。
- 体罰、大声での威嚇、名前を呼んで叱るなど、ペットにしてはいけないNGな叱り方が10選あります。
- 恐怖を与える罰ではなく、望ましい行動を褒めて伸ばす「ポジティブトレーニング」が正しいしつけの基本です。
- しつけに困ったら、ドッグトレーナーや行動診療科の獣医師など、専門家への相談も検討しましょう。
ペットとの暮らしの中で、しつけは避けて通れない大切なテーマです。「言うことを聞いてくれない」「いたずらや問題行動が治らない」と悩んだとき、つい感情的に叱ってしまうこともあるかもしれません。しかし、その叱り方、実はペットとの信頼関係を壊し、問題をさらに悪化させている可能性があります。 この記事では、犬や猫のしつけで絶対にやってはいけないNGな叱り方と、その代わりにどうすれば良いのか、具体的な対処法を専門家のアドバイスを交えながら詳しく解説します。大切な家族であるペットとの絆を深めるための、正しいコミュニケーション方法を学びましょう。
なぜ?動物のしつけで「叱る」が逆効果になる3つの理由
多くの飼い主が良かれと思ってやっている「叱る」という行為は、実は動物の学習にとって非効率的で、多くのデメリットを伴います。なぜ叱ることが逆効果になりやすいのか、その主な理由を3つのポイントから見ていきましょう。
1. 信頼関係の崩壊が一番のデメリット
動物にとって、飼い主は本来、安心と安全を与えてくれる最も信頼できる存在です。しかし、体罰や大声で怒鳴るといった罰を与える叱り方をされると、動物は飼い主に対して「怖い」「危険な存在」という認識を抱いてしまいます。
恐怖や不安を感じる相手との間に、健全な信頼関係を築くことはできません。信頼関係が崩壊すると、指示を聞かなくなるだけでなく、飼い主のそばにいること自体が強いストレスとなり、心身の健康に悪影響を及ぼす可能性もあります。
2. 問題行動の悪化を招く可能性
動物は、人間のように「なぜ叱られているのか」を論理的に理解することは困難です。例えば、トイレの失敗を後から叱られても、動物は「トイレを失敗したから」ではなく、「飼い主が帰ってきたら、なぜか怒られた」と誤って学習してしまいます。
その結果、飼い主の見ていないところで隠れて粗相をするようになったり、不安から別の問題行動(無駄吠え、破壊行動など)を引き起こしたりすることがあります。叱る行為は、根本的な解決策にはならないのです。
3. 強いストレスによる学習能力の低下
動物行動学の研究では、強いストレスや恐怖は、動物の学習能力を著しく低下させることがわかっています。罰を伴うトレーニングを受けた動物は、「どうすれば罰を避けられるか」ということに意識が集中してしまい、「何をすれば良いのか」という正しい行動を学習する余裕がなくなります。
一方、褒めることを中心としたポジティブなトレーニングでは、動物は楽しみながら自発的に正しい行動を学ぼうとします。効果的なしつけとは、恐怖で押さえつけることではなく、動物が安心して学習できる環境を提供することなのです。
【今すぐやめて】犬・猫との信頼関係を壊すNGな叱り方10選
ここでは、多くの飼い主がやってしまいがちな、しかし動物との関係性を破壊しかねないNGな叱り方を10個、具体的な改善策とセットで紹介します。ご自身のしつけ方法と照らし合わせながら確認してみてください。
NG1:体罰・叩く行為
叩く、蹴るといった体罰は、動物のしつけにおいて最もやってはいけない行為です。痛みと恐怖を与えるだけで、なぜその行動がダメなのかを教えることはできません。むしろ、飼い主の手を「怖いもの」と認識させ、触られることを嫌がったり、恐怖から攻撃的になったりする原因となります。
- 【改善策】 望ましくない行動をした瞬間に「ダメ」と低い声で短く伝えるのが基本です。天罰方式(飼い主がやったと気づかれずに嫌なことを経験させる。例:吠えたら大きな音が鳴る)も有効ですが、まずは罰ではなく望ましい行動を褒めて伸ばすことを意識しましょう。
NG2:大声で怒鳴る・威嚇する
大きな声で怒鳴る行為も、動物に強い恐怖とストレスを与えるだけです。特に犬や猫は聴覚が優れているため、人間の怒鳴り声は想像以上の威圧感となります。動物は「飼い主が興奮している」ことは理解できても、その理由までは分かりません。
- 【改善策】 落ち着いた低いトーンで、短く「イケナイ」「ノー」など、一貫した言葉で伝えましょう。大切なのは感情的にならないこと。穏やかでありながらも、毅然とした態度で接することが重要です。
NG3:名前を呼んで叱る
「ココ、ダメでしょ!」のように、名前を呼んでから叱るのもNGです。これを繰り返すと、動物は「自分の名前=嫌なことが起こる合図」と学習してしまいます。その結果、名前を呼ばれても飼い主の元へ来なくなり、日常のコミュニケーションに支障をきたします。
- 【改善策】 叱るときには名前を呼ばず、「ダメ」などの指示語だけを使いましょう。名前は、褒めるときや愛情を伝えるときなど、ポジティブな場面でのみ使うことを徹底してください。
NG4:長々と説教する
人間の子どもにするように、動物に対して長々と理由を説明しながら説教しても、全く意味がありません。長い説教は、単なる「飼い主の不機嫌な声」としてしか認識されず、動物を混乱させ、不安にさせるだけです。
- 【改善策】 注意は、行動の瞬間に、短く、一言で終わらせるのが鉄則です。「ダメ」「ストップ」など、家族で決めた短い言葉を使いましょう。しつけにおける指示は、シンプルさが何よりも効果的です。
NG5:時間が経ってから叱る
動物は「今」を生きているため、過去の行動と現在の罰を結びつけて考えることができません。帰宅したら部屋が荒らされていた、という状況でペットを叱っても、彼らは「帰ってきた飼い主が怒っている」としか理解できず、なぜ怒られているのか分かりません。
- 【改善策】 問題行動を発見しても、時間が経っている場合は叱らずに黙って片付けましょう。そして、同じ失敗が起きないように環境を整える(例:ゴミ箱に蓋をする、留守番前に運動させる)ことが、根本的な解決策となります。
NG6:マズルを掴む・押さえつける
犬のしつけで昔から言われることがある「マズルコントロール」ですが、人間がこれを行うと、動物にとっては威圧的で恐怖を感じる行為にしかなりません。無理に押さえつけることは、信頼関係を損ない、噛みつきなどの攻撃行動を誘発する危険性があります。
- 【改善策】 甘噛みをやめさせたい場合は、噛まれた瞬間に「痛い!」と少し高い声で言って遊びを中断し、その場を離れるのが効果的です。「噛むと楽しいことが終わる」と学習させましょう。
NG7:ご飯やおやつを取り上げる
罰として食事を抜いたり、おやつを取り上げたりする行為は、生命維持の根幹に関わる部分に不安を与えるため、絶対に行うべきではありません。食べ物の恨みは根深く、飼い主への不信感を増大させます。
- 【改善策】 食事は罰の道具ではなく、信頼関係を築くための大切なコミュニケーションの時間と捉えましょう。ご褒美としておやつを使うのは効果的ですが、罰として取り上げるのはNGです。
NG8:ケージや部屋に罰として閉じ込める
ケージやクレートは、本来、動物が安心して休める「安全な場所」であるべきです。しかし、罰としてそこに閉じ込める習慣をつけると、「ケージ=嫌なことが起こる場所」という負のイメージが定着してしまいます。
- 【改善策】 ケージやクレートは、おやつを使ったり、中で大好きなおもちゃを与えたりして、ポジティブな場所だと教えるトレーニング(クレートトレーニング)を行いましょう。リラックスできるプライベート空間として認識させることが重要です。
NG9:一貫性のない叱り方
同じ行動をしても、ある時は叱られ、ある時は見逃される、あるいは家族の中で叱る人と叱らない人がいる、といった一貫性のない対応は、動物をひどく混乱させます。何をすれば良いのかの基準が分からなくなり、学習が進まなくなります。
- 【改善策】 家族全員でしつけのルールを統一し、一貫した態度で接することが不可欠です。どんな行動に、どんな言葉で、どう対応するのかを事前に話し合っておきましょう。
NG10:愛情不足につながる無視
問題行動(例:要求吠え)に対して「無視」をすることは、時に効果的な対処法です。しかし、これを過度に行ったり、ペットが愛情を求めてきた時まで無視したりすると、動物は「自分は受け入れられていない」と感じ、深刻なストレスを抱える原因になります。
- 【改善策】 無視は、特定の行動を消すためのテクニックとして限定的に使いましょう。普段から穏やかなコミュニケーションを心がけ、ペットが落ち着いている時にたくさん褒めたり撫でたりして、十分な愛情を注ぐことが大前提です。
関係性を壊さない!「ポジティブトレーニング」の基本
NGな叱り方をやめるだけでは、問題は解決しません。代わりに、動物との関係性を深めながら望ましい行動を教える「ポジティブトレーニング」を取り入れましょう。
ポジティブトレーニングとは?
- 「望ましい行動をしたら、良いこと(ご褒美)が起こる」という経験を繰り返すことで、その行動を動物が自発的に行うように促すアプローチです。
- 恐怖やストレスを与えず、飼い主とのコミュニケーションを楽しみながら学習できるため、信頼関係の構築に非常に効果的です。
効果的な褒め方の3つのコツ
ポジティブトレーニングの成功は、効果的な褒め方にかかっています。
- タイミング: 望ましい行動をした「直後(0.5秒以内が理想)」に褒める。
- 声のトーン: 普段より少し高めの、明るく優しい声で「いい子!」「上手!」と褒める。
- ご褒美の種類: おやつだけでなく、おもちゃでの遊び、撫でることなど、その子が喜ぶものを使い分ける。
「天罰方式」と「無視」の正しい使い方
ポジティブトレーニングが基本ですが、危険な行動や止めさせたい行動には、他のアプローチも有効です。
- 天罰方式: 望ましくない行動をした瞬間に、飼い主がやったと気づかれずに嫌なことが起こるように仕向ける方法。(例:家具を噛んだ瞬間に、隠れていた家族が大きな音を立てる)
- 無視: 飼い主の気を引くための問題行動(例:かまってほしくて吠える)に効果的。その行動中は徹底して無反応を貫き、静かになった瞬間に初めて褒めます。
【ケース別】犬・猫の具体的な問題行動への対処法
ここでは、多くの飼い主が悩む代表的な問題行動について、ポジティブなアプローチに基づいた具体的な対処法を紹介します。
無駄吠えへの対処法
犬が吠えるのには、警戒、要求、興奮など様々な理由があります。まずは「なぜ吠えているのか」を観察することが第一歩です。
- 来客に吠える場合: インターホンが鳴ったらハウスさせ、静かにできたらご褒美をあげる練習を繰り返す。
- 要求吠えの場合: 徹底して無視し、静かになったら褒める。
- 運動不足やストレスが原因の場合: 散歩の時間を増やしたり、知育おもちゃを与えたりしてエネルギーを発散させる。
トイレの失敗への対処法
トイレの失敗を叱るのは逆効果です。失敗した場所は、ペット用の消臭剤で臭いを徹底的に消しましょう。そして、成功した時に大げさなくらい褒めて、特別なおやつをあげることが重要です。「トイレで排泄すると、すごく良いことがある」と学習させることが目標です。
甘噛み・破壊行動への対処法
子犬や子猫の甘噛みや破壊行動は、多くの場合、歯の生え変わりのむず痒さや、有り余るエネルギーが原因です。叱るのではなく、まずは噛んでも良いおもちゃを十分に与えましょう。人間や家具を噛んだら、「痛い!」と短く言って遊びを中断し、その場を離れます。おもちゃを上手に噛んで遊んでいる時にたくさん褒めてあげましょう。
しつけに困ったら専門家への相談も検討しよう
様々な方法を試しても問題行動が改善しない場合は、一人で抱え込まずに専門家に相談することをお勧めします。
相談できる専門家の種類
- ドッグトレーナー: 基本的なしつけやトレーニング、問題行動の改善に関する実践的なアドバイスを提供。
- 獣医師(特に行動診療科): 問題行動の背景に病気や痛みが隠れていないか診断し、医学的な観点から治療やアドバイスを行う。
攻撃性が強い、分離不安が深刻など、医学的な対応が必要そうな場合は、まず行動診療を専門とする獣医師に相談するのが良いでしょう。
専門家に相談するメリット
専門家に相談する最大のメリットは、その子の性格や生活環境に合わせた、客観的で効果的なオーダーメイドのアドバイスをもらえることです。プロの視点からトレーニングプランを立ててもらうことで、飼い主自身の不安やストレスが軽減され、前向きにしつけに取り組めるようになります。
まとめ:叱るから褒めるへ。信頼関係を育むコミュニケーションを
ペットのしつけで最も大切なことは、力で押さえつけることではなく、深い信頼関係を築くことです。この記事で紹介したNGな叱り方は、動物に恐怖と不安を与え、かけがえのない絆を壊してしまいます。
体罰や大声で怒鳴る方法は今日からやめ、代わりに望ましい行動を見つけてたくさん褒めてあげるポジティブなコミュニケーションを心がけましょう。
問題行動には必ず理由があります。その背景にあるペットの気持ちを理解しようと努め、環境を整え、正しい行動を粘り強く教えていくことが飼い主の役割です。もし悩んだら、専門家の力も借りながら、あなたとペットだけの最高のパートナーシップを築いていってください。
よくある質問(FAQ)
Q1: 子犬や子猫のしつけで特に気をつけることは何ですか?
A1: 子犬・子猫の時期は、社会性を身につける非常に重要な期間です。様々な人や他の動物、音などに慣れさせる「社会化」を積極的に行いましょう。この時期に怖い経験をするとトラウマになりやすいため、しつけは特に褒めることを中心に行い、罰を与える方法は避けるべきです。
Q2: どんなに頑張っても言うことを聞かない場合はどうすればいいですか?
A2: まず、問題行動の裏に病気や痛みが隠れていないか、かかりつけの獣医師に相談してください。身体的な問題がない場合は、ドッグトレーナーなどプロの助けを借りるのが賢明です。その子の気質や環境を客観的に評価してもらい、適切なトレーニング方法を指導してもらうことで、解決の糸口が見つかることが多くあります。
Q3: 家族間で叱り方が違うのですが、問題ありますか?
A3: はい、大きな問題です。家族間で対応に一貫性がないと、ペットは何を基準に行動すれば良いのか分からなくなり、ひどく混乱します。事前に家族会議を開き、「問題とする行動」「使う指示語(ダメ、など)」「具体的な対処法」といったしつけのルールを全員で共有し、徹底することが非常に重要です。
- 感情的に叱る行為は、ペットとの信頼関係を破壊し、問題行動をさらに悪化させるため、絶対に避けるべきです。
- 体罰、大声での威嚇、名前を呼んで叱るなど、ペットの心に深い傷を残す10のNG行動を今日からやめましょう。
- 正しいしつけは、望ましい行動を即座に褒めて報酬を与える「ポジティブトレーニング」が基本です。
- 家族全員でしつけのルールを統一し、問題解決が難しい場合は専門家へ相談して、ペットとの絆を深めましょう。
初回公開日:2025年12月23日
記載されている内容は2025年12月23日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。