猫の睡眠時間は?寝床の作り方から夜鳴き対策まで獣医行動学で解説
更新日:2025年12月11日
- 猫の平均睡眠時間は子猫・高齢猫で18-20時間、成猫で12-16時間と年齢で異なり、変化は病気のサインになることがあります。
- 猫の睡眠は浅い眠りと深い眠りを繰り返し、レム睡眠中には夢を見ていると考えられており、記憶の整理にも重要です。
- 安心して眠れる寝床は、狭く暗い場所、少し高い場所、飼い主の匂いがする場所などが理想的で、温度・湿度、清潔さも大切です。
- 夏はひんやりマット、冬は段ボールやペットヒーターで快適な環境を作り、夜鳴きは日中の活動不足が主な原因なのでしっかり遊ばせましょう。
- 猫の睡眠を理解し、その習性に合った最適な寝床と安心できる環境を提供することが、健康維持と病気予防に繋がります。
猫の平均睡眠時間|子猫・成猫・高齢猫で違う?病気のサインも解説
猫はよく寝る動物ですが、その睡眠時間は年齢によって大きく変わります。また、睡眠時間や寝方の変化は、健康状態を知るための重要なバロメーターです。
【年齢別】猫の平均睡眠時間
年齢別!猫の平均睡眠時間
- 子猫(〜1歳):約18時間〜20時間。心身の成長に多くのエネルギーを要するため、1日のほとんどを寝て過ごします。
- 成猫(1歳〜7歳):約12時間〜16時間。まとめて眠るのではなく、短い睡眠を繰り返すのが特徴です。
- 高齢猫(7歳以上):約18時間〜20時間。基礎代謝が低下し、活動量が減るため再び睡眠時間が長くなります。
心身の成長に多くのエネルギーを要するため、1日のほとんどを寝て過ごします。睡眠中には成長ホルモンが活発に分泌されるため、子猫にとって寝ることは最も大切な仕事です。快適な睡眠環境が、健やかな発育の土台となります。
成猫になると睡眠時間は少し短くなります。ただし、まとめて眠るわけではなく、短い睡眠を繰り返すのが特徴です。野生時代の猫は、狩りのためにエネルギーを温存しつつ、外敵から身を守るために常に警戒していました。その習性が今も残り、浅い眠り(ウトウト)と深い眠りを繰り返しながら効率的に体を休ませています。
7歳以上のシニア猫になると、再び睡眠時間が長くなる傾向があります。基礎代謝が低下し、活動量が減ることが主な理由です。ただし、あまりにも寝てばかりでぐったりしている場合は、病気が隠れている可能性も考えられるため注意が必要です。
「寝てばかり」「寝ない」は病気のサイン?注意すべき睡眠の変化
愛猫の睡眠時間や行動を日頃から観察することは、健康管理において非常に重要です。以下のような変化が見られたら、注意深く様子を見るか、獣医師に相談しましょう。
- 急に寝てばかりいるようになった: 関節炎などの痛みで動くのが辛い、あるいは内臓系の病気が原因かもしれません。
- 夜中に落ち着きなく鳴きながらウロウロする: 高齢猫の場合、甲状腺機能亢進症や認知機能の低下といった病気のサインかもしれません。
- 大きないびきをかく: 時々かく程度なら問題ありませんが、常に大きないびきをかく場合は、鼻炎、肥満、鼻腔内の腫瘍などで気道が狭くなっている可能性があります。
- 激しい痙攣: 睡眠中に体がピクピク動くのは、夢を見ているレム睡眠中の正常な行動です。しかし、全身が硬直してガクガクと震えるような激しい痙攣が続く場合は、てんかんなど神経系の病気の疑いがあります。
少しでも異変を感じたら、動画を撮影して獣医師に見せると診断の助けになります。
猫の睡眠サイクルを科学する|レム睡眠で夢を見るって本当?
猫の睡眠は、単に体を休ませているだけではありません。人間と同じように、脳と体を回復させるための複雑なサイクルを繰り返しています。
「浅い眠り」と「深い眠り」の繰り返し
猫の睡眠は、主に「ノンレム睡眠(深い眠り)」と「レム睡眠(浅い眠り)」で構成されています。
- 浅い眠り(ノンレム睡眠の一部+レム睡眠):睡眠の約75% 物音ですぐに目を覚ませる「ウトウト睡眠」の状態です。目を半分閉じ、耳は音のする方を向くなど、周囲への警戒を怠っていません。これは、野生時代に敵からすぐに逃げられるように備えていた習性の名残です。
- 深い眠り(ノンレム睡眠):睡眠の約25% 脳も体も完全に休息状態に入る「熟睡」の状態です。この時間帯に、猫は真の休息を得て体力を回復させています。
猫の睡眠サイクルは人間より短く、約20〜30分で浅い眠りと深い眠りを繰り返していると考えられています。
レム睡眠中の猫は何をしている?夢を見るのか
レム睡眠は、体は深く眠っているのに、脳は活発に活動している状態です。この時、猫は夢を見ていると考えられています。レム睡眠中の猫を観察すると、ヒゲや手足がピクピク動いたり、「ニャッ」と寝言を言ったりすることがあります。これは、夢の中で獲物を追いかけているのかもしれません。
レム睡眠は、日中の記憶を整理・定着させる重要な役割も担っています。愛猫が睡眠中に不思議な行動をしていても、心身の健康を維持するための大切な時間なので、無理に起こさず静かに見守ってあげましょう。
猫が安心して熟睡できる「理想の寝床」の作り方【5つのポイント】
猫が快眠を得るためには、心からリラックスできる「安全基地」としての寝床が不可欠です。猫の習性を理解し、本能的に求める環境を用意しましょう。
猫が好む寝床の条件とは?
猫が好む寝床には、いくつかの共通点があります。
- 狭くて暗い場所: 段ボール箱や家具の隙間など、体をすっぽり包む閉鎖的な空間は、敵から身を隠せるため絶大な安心感を与えます。
- 少し高い場所: キャットタワーや棚の上など、縄張り全体を見渡せる場所は、外敵に襲われる心配がなく安心できます。
- 飼い主の匂いがする場所: 信頼する飼い主の匂いがついた毛布や衣類の上は、何よりの安心材料です。
- 静かで落ち着ける場所: 人の出入りが激しい場所や生活音が大きい場所は避けましょう。猫は聴覚が鋭いため、騒がしい場所では熟睡できません。
快眠できる寝床環境を作る5つのポイント
- 最適な温度と湿度を保つ 猫が快適な室温は20~28℃、湿度は50~60%が目安です。特に体温調節が苦手な子猫や高齢猫には、細心の注意を払いましょう。
- 好みの素材を選ぶ 柔らかいフリースやタオル、夏場は通気性の良い綿や麻など、猫の好みに合わせます。爪が引っかかりにくい素材を選ぶことも大切です。
- 設置場所を工夫する リビングの隅や静かな寝室など、猫が落ち着ける場所に設置します。窓際は外の景色を楽しめますが、夏の直射日光や冬の冷気に注意が必要です。
- 複数の寝床を用意する 猫は気分や気温で寝る場所を変える習性があります。日当たりの良い場所、涼しい場所、隠れられる場所など、性質の違う寝床を複数用意すると猫の満足度が上がります。
- 清潔さを維持する 寝床は抜け毛や皮脂で汚れやすいため、定期的に洗濯して清潔に保ちましょう。ノミやダニの発生を防ぎ、皮膚の健康を守るためにも重要です。
【季節別】猫の寝床|夏と冬の快適な環境作りのアイデア
日本の四季に合わせて寝床環境を調整することで、愛猫は一年中、質の高い睡眠を得られます。
夏の暑さ対策:ひんやりマットや風通しで熱中症予防
夏の厳しい暑さは、猫の熱中症リスクを高めます。涼しい寝床作りは欠かせません。
- ひんやりグッズを活用する: アルミプレートやジェルタイプのひんやりマットは、手軽に涼しい場所を提供できます。
- 風通しの良い場所を選ぶ: エアコンの冷気が直接当たらない、空気が循環する場所を選びましょう。
- 涼しい場所への道を確保する: 玄関のタイルやフローリングなど、猫が自分で見つけた涼しい場所へ自由に行き来できるようにしましょう。
- 直射日光を遮る: すだれや遮光カーテンで室温の上昇を抑える工夫も有効です。
冬の寒さ対策:段ボールやペットヒーターで暖かく
寒さが厳しい冬、猫は暖かい場所を求めます。
- 段ボール箱を置く: 段ボールは断熱性に優れ、狭い空間が自分の体温で暖まるため、猫にとって最高の保温グッズです。
- 暖かい素材のベッドを用意する: フリースやボア素材のベッドや毛布も効果的です。
- ペット用暖房器具を使う: ペット用ホットカーペットや湯たんぽも人気ですが、低温やけどに十分注意してください。必ずタオルで包み、猫が自分で移動できるスペースを確保しましょう。
- 日当たりの良い場所を作る: 日中の窓辺は天然のホットスポットです。日向ぼっこしながら昼寝できるよう、ベッドを置いてあげると喜ぶでしょう。
猫の睡眠に関する悩みQ&A|夜鳴き・ストレスの原因と対策
愛猫の睡眠に関して、飼い主が悩むケースも少なくありません。代表的な悩みと対策を解説します。
Q. 夜鳴きや夜中の運動会がうるさくて眠れません。
- A. 日中のエネルギー不足が主な原因です。寝る前にしっかり遊んであげましょう。 特に若い猫に見られる行動で、昼間の活動量が足りていないことが原因です。猫は本来夜行性のハンターなので、その習性が夜中の活動に繋がります。 最も効果的な対策は、飼い主が寝る前に、猫じゃらしなどのおもちゃで思いっきり遊んであげることです。狩猟本能を満たしてエネルギーを発散させることで、夜はぐっすり眠ってくれるようになります。また、空腹で鳴いている可能性もあるため、食事の時間や量を見直すことも有効です。
Q. ストレスで眠れていないようです。どうすればいいですか?
- A. まずはストレスの原因を取り除き、安心して隠れられる場所を確保してあげましょう。 猫は環境の変化に非常に敏感です。引っ越しや模様替え、新しい家族が増えるといった変化は大きなストレスとなり、睡眠障害を引き起こすことがあります。 まずは原因を特定し、猫が一人で静かに過ごせる安全な隠れ家(寝床)を確保し、無理に構わずそっとしてあげることが重要です。飼い主がゆったりと構え、優しく声をかけるだけでも猫の不安は和らぎます。ストレスで食欲不振や過剰なグルーミングなどが見られる場合は、病気の可能性もあるため獣医師に相談しましょう。
まとめ:猫の睡眠を理解して最高の寝床と安心をプレゼントしよう
猫の睡眠は、単なる休息以上のもので、心身の健康を支える根幹です。猫の睡眠サイクルや、安心できる場所を求める本能的な習性を理解することは、飼い主ができる最高のケアの一つです。
この記事で紹介したように、理想の寝床作りは、場所の選定、温度管理、季節ごとの工夫など、様々な要素から成り立っています。愛猫の年齢や性格、健康状態をよく観察し、その子に最適な環境を整えてあげましょう。複数の寝床を用意し、猫自身に選ばせることも満足度を高める上で非常に効果的です。
日々の睡眠の様子を注意深く見守り、小さな変化に気づくこと。それが病気の早期発見やストレスの軽減に繋がり、愛猫が健康で長生きする基盤となります。愛猫との絆を深めながら、最高の快眠環境を整えてあげましょう。
- 猫の睡眠は健康のバロメーターであり、年齢によって適切な睡眠時間が異なります。異常を見つけたら獣医師に相談しましょう。
- 猫は浅い眠りと深い眠りを繰り返し、レム睡眠中に夢を見るとされ、記憶整理にも重要な役割を果たしています。
- 猫が安心して眠れる寝床は、狭さ、高さ、静かさ、飼い主の匂い、適切な温度・湿度、清潔さが重要な要素です。
- 季節ごとに寝床環境を調整し、夏は涼しく、冬は暖かく保つことで、熱中症や体調不良を防ぎます。
- 夜鳴きやストレスによる睡眠不足には、日中の遊びや安心できる隠れ家の確保が効果的です。
よくある質問(FAQ)
Q1: 猫はいびきをかきますが、病気でしょうか?
- A1: 人間と同じように、猫も時々いびきをかきます。寝息が少し大きい程度なら心配いりません。 しかし、いびきの音が急に大きくなった、常に苦しそう、鼻水やくしゃみを伴う場合は注意が必要です。鼻炎や肥満、鼻腔内のポリープや腫瘍といった病気の可能性も考えられます。気になる場合は、獣医師に相談することをおすすめします。
Q2: 子猫におすすめの寝床はどんなものですか?
- A2: 体をすっぽりと包み込み、母猫に寄り添っているような安心感を得られる寝床が最適です。 ドーム型や、縁が高いカップ型のベッドが人気です。子猫は体温調節が未熟なため、保温性の高い素材を選び、ペットヒーターなどで暖かく保ってあげることが重要です。また、丸洗いできる素材を選ぶと衛生的です。
Q3: 高齢猫のために寝床で気をつけることはありますか?
- A3: 高齢猫は関節の痛みなどで、高い場所への上り下りが負担になります。床に近い、段差の少ない場所に快適な寝床を用意してあげましょう。 寝ている時間が長くなるため、床ずれを防ぐ低反発素材のマットもおすすめです。体温調節機能も低下するため、特に冬場の温度管理に気を配り、快適な睡眠をサポートしてあげてください。
初回公開日:2025年12月11日
記載されている内容は2025年12月11日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。