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犬のケージトレーニング完全ガイド|「かわいそう」じゃない安心ハウスの作り方とステップ別練習法

更新日:2025年12月23日

1分でわかるこの記事の要約 犬のケージトレーニングは、愛犬にとって安心できる「自分だけの場所」を作るための大切な訓練です。 正しく行えば、留守番中の安全確保、飼い主のストレス軽減、災害時の備えなど多くのメリットがあります […]
1分でわかるこの記事の要約
  • 犬のケージトレーニングは、愛犬にとって安心できる「自分だけの場所」を作るための大切な訓練です。
  • 正しく行えば、留守番中の安全確保、飼い主のストレス軽減、災害時の備えなど多くのメリットがあります。
  • トレーニングは焦らず犬のペースに合わせ、罰として使わず、常にポジティブな経験を積み重ねましょう。
  • 成犬からでも十分可能で、うまくいかない場合は専門家への相談も検討しましょう。

ケージやクレートと聞くと、「犬を閉じ込めるかわいそうなもの」というイメージをお持ちではありませんか?しかし、本来ケージトレーニングは、愛犬に罰を与えるためのものではありません。正しいトレーニング方法を実践すれば、犬にとってそこは誰にも邪魔されない「最高の安心できる場所」に変わります。この記事では、犬のしつけの専門家であるドッグトレーナーの視点から、ケージ嫌いにさせないための具体的な慣らし方、留守番や防災時に役立つポイントまで、初めての方にも分かりやすく解説します。

ケージトレーニングとは?「閉じ込める」のではなく「安心できるハウス」を作ること

なぜケージトレーニングが必要?犬と飼い主双方のメリットを理解しよう

ケージトレーニングの目的は、犬を無理やり閉じ込めることではなく、犬が自ら喜んで入る「安心できる自分だけの居場所(ハウス)」を作ってあげることです。犬の祖先であるオオカミは、巣穴で休息する習性がありました。その名残から、犬は本能的に狭くて少し暗い、囲まれた空間を好む傾向があります。適切にトレーニングされたケージは、犬にとって心から落ち着くことができる、いわば自分だけの「お部屋」や「シェルター」のような存在になるのです。

このトレーニングを成功させることには、多くのメリットがあります。

  • 愛犬の安全確保: 留守番中に電気コードをかじったり、危険なものを誤飲したりといった事故を防ぎます。
  • 飼い主のストレス軽減: 愛犬が安全な場所で落ち着いて過ごしていると分かれば、安心して外出できます。
  • 日常生活での活用: 来客や掃除中など、犬が興奮したり危険が伴ったりする場面で、お互いに快適に過ごせます。
  • 非日常時への備え: 通院、旅行、災害時など、慣れない状況でも大きなストレスを軽減できます。特に災害時の避難所生活では、慣れたハウスがあることが犬の心の大きな支えとなります。

このように、ケージトレーニングは愛犬と飼い主の生活をより豊かで安全なものにするための、非常に重要な訓練なのです。

クレートトレーニングとの違いは?目的は同じ

「ケージトレーニング」と似た言葉に「クレートトレーニング」がありますが、これらは基本的に同じ目的を持つトレーニングを指します。

ケージとクレートの違い

  • ケージ: 一般的に、金属製の柵で囲まれた、室内での居住空間として使われるものを指します。サークルと一体化しているタイプもあります。
  • クレート: プラスチック製などで作られた、持ち運び可能な箱型のハウスを指すことが多く、「キャリー」や「バリケン」とも呼ばれます。

形状や主な用途に違いはありますが、どちらも「犬が自ら入って落ち着ける場所を作る」というトレーニングの目的は共通しています。 本記事では、これらのトレーニングを総称して「ケージトレーニング」として解説します。


ケージトレーニング入門!初めてでも失敗しないための準備

犬に合ったケージ・クレートの選び方

トレーニングを始めるにあたり、最も重要なのが愛犬に合ったケージやクレートを選ぶことです。

サイズの選び方と素材のポイント

  • サイズの目安: 犬が中で「楽に立てる」「体の向きを自由に変えられる」「伏せができる」十分な広さがあること。広すぎるとトイレにしてしまう可能性があるので注意。
  • 素材別特徴:
    • プラスチック製: 軽量、持ち運びやすい、掃除が簡単、犬が落ち着きやすい。
    • 金属製: 通気性が良い、頑丈、耐久性に優れる、折りたたみ可能で収納に便利。
    • 布製(ソフトクレート): 非常に軽い、旅行に便利。ただし、噛み癖のある犬には不向き。

愛犬の性格や主な使用目的に合わせて、最適なものを選んであげましょう。

ケージの最適な設置場所

設置場所も、トレーニングの成功を左右する重要な要素です。犬は家族の気配が感じられない孤立した場所では不安を感じるため、リビングなど、家族が普段過ごす部屋に設置するのがおすすめです。

ただし、以下の場所は避けてください。

  • 直射日光が当たる場所
  • エアコンや暖房の風が直接当たる場所
  • テレビやスピーカーのすぐそばなど、大きな音がする場所

静かで、かつ家族の存在を感じられる部屋の隅などが理想的です。ケージの周りを布で覆ってあげると、より「巣穴」感が増し、犬がリラックスしやすくなります。


【4ステップ】犬のケージトレーニングの正しいやり方

ステップ1:ケージに良い印象を持たせる(扉は開けたまま)

第一歩は、犬に「ケージは怖くない、良いことがある場所だ」と教えることです。絶対に犬を無理やり中に押し込んではいけません。

まずはケージの扉を開けたまま、あるいは取り外した状態で部屋に置き、犬が自由に出入りできるようにします。ケージの中にお気に入りのおもちゃや特別なおやつ(ごほうび)を置き、犬が自発的に入ったら優しく褒めてあげましょう。この段階では「ハウス」というコマンドは使わず、「中に入ると良いことがある」というポジティブな経験を積ませることが目的です。

ステップ2:「ハウス」のコマンドを教える

犬がケージに慣れてきたら、「ハウス」というコマンドを教えます。おやつをケージの中に投げ入れるのと同時に「ハウス」と優しい声で伝えます。犬が中に入ったら、すかさず「いい子!」と褒め、さらに別のおやつをケージの中で与えましょう

この練習を繰り返すことで、犬は「ハウス」という言葉と「ケージに入ること=ごほうび」を関連付けて学習します。この段階でもまだ扉は閉めず、犬が自由に出入りできる状態を保つことが重要です。

ステップ3:短時間だけ扉を閉めてみる

「ハウス」のコマンドでスムーズに入れるようになったら、短時間だけ扉を閉める練習を始めます。犬がケージの中でおやつを食べている時や、知育トイに夢中になっている間に、そっと扉を閉めてみましょう。

最初はほんの数秒から始めます。犬が吠えたり騒いだりする前に、必ず扉を開けてあげましょう。そして、静かにしていられたことを褒めます。少しずつ扉を閉めている時間を5秒、10秒、30秒と延ばしていきます。 コツは、犬が鳴いたり騒いだりしている時に扉を開けないこと。 必ず、犬が静かに落ち着いている瞬間に開けるようにし、「静かに待てば出られる」と学習させます

ステップ4:飼い主が離れてみる

扉を閉めた状態で数分間落ち着いていられるようになったら、飼い主がその場から離れる練習です。これも短い時間、短い距離から始めます。

まず同じ部屋の中で数歩離れてみましょう。落ち着いていれば、すぐに戻って褒めて扉を開けます。次に、部屋から出て姿が見えなくなる練習をします。これも数秒から始め、徐々に時間を延ばしていきます。 戻ってきた際には、犬が興奮していてもすぐにケージから出さず、まず落ち着くのを待ってから扉を開けてあげるのがポイントです。大げさに構いすぎると分離不安を助長することがあるため、冷静に接しましょう。


よくある悩みと対策|ケージを嫌がる・吠える犬へのアプローチ

【理由別】犬がケージを嫌がる4つの主な原因

愛犬がケージを嫌がるのには必ず理由があります

ケージを嫌がる主な4つの原因

  • 過去の嫌な経験(トラウマ): 罰として閉じ込められたり、無理やり押し込まれたりした経験から、「ケージ=怖い場所」と認識している。
  • 分離不安: 飼い主と離れることに強い不安を感じる犬にとって、ケージが「別れの合図」になっている。
  • 不快な環境: サイズが合っていない、不衛生、暑すぎる・寒すぎるなど、ケージの中が快適ではない。
  • 要求吠えの学習: 「出せ!」と吠えれば飼い主が出してくれる、と学習してしまっている。

これらの原因を見極め、それぞれに合った対策を講じることが重要です。

ケース別・ケージの中で吠える、鳴くときの対策

犬がケージの中で吠える場合、その理由によって対策が異なります。

  • 「出してほしい」という要求吠えの場合 基本は「無視」が最も効果的です。 ここで反応すると、「吠えれば要求が通る」と学習してしまいます。根気がいりますが、犬が吠えるのをやめて静かになった瞬間に、すかさず褒めて扉を開けてあげましょう
  • 不安や寂しさから鳴いている場合(クーン、クンクンなど) 無視すると不安を煽ってしまう可能性があります。飼い主さんの匂いがついたタオルを入れたり、ケージを布で覆って落ち着ける空間を作ったりして、まず犬が安心できる環境を整えましょう。また、トイレに行きたい可能性も考えられるため、ケージに入れる前には必ずトイレを済ませる習慣をつけてください。

成犬からでもケージトレーニングは可能?

はい、成犬からでもケージトレーニングは十分に可能です。 子犬に比べて時間がかかったり、過去の苦手意識が定着していたりすることはありますが、基本的なトレーニング方法は変わりません。成犬から始める上で最も大切なのは、飼い主が焦らず、根気強く取り組む姿勢です。

特に保護犬など、過去にトラウマを抱えている可能性のある犬には、より慎重にポジティブな経験を積み重ねていく必要があります。どうしても上手くいかない場合は、行動学に詳しい獣医師やプロのドッグトレーナーに相談しましょう


シーン別・ケージトレーニングの応用術

留守番を成功させるコツ

安全な留守番のために、飼い主が出かけることを「特別なイベント」にしないことがコツです。外出準備は淡々と行い、家を出る少し前に「ハウス」の指示で静かにケージに入らせ、知育トイなど時間のかかるごほうびを与えてから、さりげなく外出するのが理想です。 帰宅時も同様で、興奮している犬をすぐにケージから出すのではなく、飼い主がまず落ち着き、犬も静かになってから扉を開けてあげましょう。 「犬をケージで留守番させるのは何時間まで?」という疑問もよく聞かれますが、成犬でも8時間を超える長時間の留守番は心身ともに大きなストレスとなる可能性があるため、十分な訓練と環境整備が必須です。

夜、安心して寝る場所(寝床)にする方法

ケージを夜ぐっすり眠るための「寝床」にすることも重要な目標です。子犬の時期に多い「夜泣き」は、寂しさが主な原因ですが、鳴くたびに出してしまうと習慣化してしまいます。要求に応えず静かになるのを待つのが基本ですが、トイレが原因でないか確認し、寝る前には必ず排泄させましょう。飼い主の匂いのついたものを入れたり、お湯を入れたペットボトルをタオルで巻いたりするのも効果的です。

通院や移動時のストレスを軽減するために

日頃からクレートに慣れている犬は、車での移動や動物病院での待機など、非日常的な場面でのストレスが格段に少なくなります。「いつもの安心できるハウス」が精神的な支えになるのです。

クレートに慣らすだけでなく、車や病院そのものに良い印象を持たせる練習も並行して行うとさらに効果的です。短いドライブから始めたり、診察がなくても病院の待合室でおやつをあげたりして、少しずつ慣らしていきましょう。

防災時に役立つ!「どこでもハウス」の重要性

災害時のペットとの同行避難では、多くの場合ペットはケージやクレート内で過ごすことが原則です。ケージトレーニングは、もはや愛犬の命を守るための「必須のしつけ」と言えます。

災害という極限のストレス状況下でも、普段から「ハウス」が安全地帯だと認識できていれば、避難所でも比較的落ち着いて過ごすことができます。周囲への迷惑を防ぎ、避難所での受け入れをスムーズにするためにも、日頃からの訓練が最も重要な防災対策の一つなのです。


ケージトレーニングを成功させるための3つの重要ポイント

1. ごほうびの正しい使い方

ごほうびは、犬が望ましい行動をとった直後(0.5秒以内が理想)に与えるのが最も効果的です。「ハウス」で入った瞬間や、中で静かにしている瞬間に与えましょう。

トレーニング初期は、犬が大好きで特別な、普段はあまりもらえないおやつを使うと効果的です。おやつだけでなく、「いい子!」といった褒め言葉や、体を撫でてあげることも素晴らしいごほうびになります。

2. 罰として絶対に使わない

ケージトレーニングで絶対にやってはいけないこと、それはケージを「罰の場所」として使うことです。 いたずらをした罰としてケージに閉じ込めると、犬は「ケージ=嫌なことが起きる場所」と学習してしまいます。一度ついてしまった悪い印象を覆すのは非常に困難です。ケージは、常にポジティブで安全な場所であり続けなければなりません。

3. 焦らず、犬のペースに合わせる

ケージトレーニングの成功への一番の近道は、「焦らないこと」です。トレーニングの進み具合には大きな個体差があります。飼い主の焦りやイライラは犬に伝わり、トレーニングがうまくいかない原因になります。

犬が嫌がる素振りを見せたら、無理強いせず一つ前のステップに戻りましょう短時間のトレーニングを毎日コツコツと続けることが大切です。飼い主自身がリラックスして、愛犬とのコミュニケーションを楽しみながら取り組みましょう。


まとめ

ケージトレーニングは、愛犬に心から落ち着ける「自分だけの部屋」を提供してあげるという、愛情のこもったしつけです。このトレーニングは、留守番中の安全確保やストレス軽減に繋がり、問題行動の改善にも役立ちます。さらに、通院や災害時など、非日常の状況において愛犬の心の大きな支えとなります。

この記事で紹介したステップやコツを参考に、今日からあなたも愛犬との新しいコミュニケーションの一環として、ケージトレーニングを始めてみませんか?きっと、愛犬との絆がより一層深まるはずです。

この記事のまとめ
  • ケージトレーニングは、愛犬に心から落ち着ける「自分だけの部屋」を提供する愛情のこもったしつけです。
  • 留守番中の安全確保、ストレス軽減、問題行動の改善だけでなく、愛犬の命を守るための必須のしつけとなります。
  • 通院や災害時など非日常の状況で、愛犬の心の大きな支えとなり、飼い主との絆を深めます。
  • 焦らず犬のペースに合わせ、ごほうびを正しく使い、罰として絶対に使わないことが成功の鍵です。

FAQ|よくある質問

Q1: 子犬のケージトレーニングはいつから始めるべきですか? A1: ご自宅にお迎えしたその日から始めるのが理想的です。子犬は順応性が高いため、新しい家に慣れるのと同時に「ケージ=安心できる寝床」と教えることで、スムーズに受け入れてくれることが多いです。まずは扉を開けた状態で、ポジティブな第一印象を与えることから始めましょう。

Q2: ケージの中でトイレをしてしまいます。どうすればいいですか? A2: ケージのサイズが広すぎる可能性があります。仕切り板などで、犬が伏せて手足を伸ばせる程度のスペースに調整してみてください。また、トイレトレーニングが完了していない子犬の場合は、ケージから出すタイミングで必ずトイレに連れて行く習慣をつけ、成功したらたくさん褒めることを繰り返しましょう。

Q3: どんなにごほうびを使ってもケージに入りません。どうすれば? A3: ケージに対して強い恐怖心やトラウマを抱いている可能性があります。無理強いは逆効果です。一度トレーニングをリセットし、ケージの扉を取り外して「部屋の家具」として存在に慣れさせることから始めましょう。ケージのすぐそばで食事をさせるなど、少しずつ距離を縮めていくのがコツです。それでも改善しない場合は、専門のドッグトレーナーへの相談をお勧めします

初回公開日:2025年12月23日

記載されている内容は2025年12月23日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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