【保存版】シニア犬が食べない原因7つ|病気の可能性・食べさせる工夫・病院に行くべき症状を徹底解説
更新日:2025年12月11日
- 老犬の食欲不振は加齢だけでなく、歯周病や内臓疾患などの病気が原因である可能性があります。
- 家庭ではフードを温めたり回数を増やしたり、安全なトッピングを活用して食欲を刺激する工夫が可能です。
- ぐったりしている、嘔吐や下痢を繰り返す、24時間以上何も食べないなどの緊急性の高い症状が見られたら、すぐに動物病院を受診してください。
- 食欲低下が続く場合や体重減少が見られる場合は、自己判断せずに獣医師に相談し、早期の原因特定と適切な対処が重要です。
- 愛犬の小さな変化に気づき、獣医師と連携して健康なシニアライフをサポートしましょう。
「最近、愛犬がご飯をあまり食べなくなった」「大好きだったドッグフードを残すようになった」など、7歳以上のシニア期(高齢期)に入った愛犬の食欲低下に心を痛めている飼い主様は少なくありません。
単なる老化現象と片付けてしまいがちですが、その背景には、歯周病や内臓疾患といった見過ごせない病気が隠れている可能性があります。
この記事では、老犬・シニア犬がご飯を食べなくなる主な原因を獣医師が徹底解説。ご家庭でできる具体的な栄養対策やフードを食べやすくする工夫、そして動物病院へ相談すべき危険なサインまで、詳しくご紹介します。
シニア犬(老犬)の食欲低下はなぜ起こる?考えられる7つの原因
高齢犬の食欲不振には、様々な原因が考えられます。加齢による自然な変化から、治療が必要な病気のサインまで、その可能性は多岐にわたります。まずは、なぜご飯を食べなくなってしまうのか、考えられる主な7つの原因を理解することから始めましょう。
1. 加齢による自然な変化
犬も人間と同じように、年を重ねると体に変化が現れます。シニア期に入ると運動量が減り、基礎代謝も低下するため、1日に必要なエネルギー量が減少します。その結果、自然と食事の量が減ることがありますが、これは生理的な老化現象の一つです。
また、嗅覚や味覚が衰えることで、フードの匂いや味を感じにくくなり、食事への興味が薄れてしまうことも食欲低下の一因です。ただし、「年のせい」と安易に判断せず、愛犬の体調や行動の変化を注意深く観察することが健康維持の鍵となります。
2. 口内トラブル(歯周病・口内炎)
「食欲はありそうなのに食べられない」「口元にフードを持っていくと食べたそうにするが、口に入れるとやめてしまう」といった場合、口の中の痛みが原因かもしれません。
特にシニア犬に多いのが歯周病です。歯垢や歯石が溜まって歯茎が炎症を起こし、悪化すると強い痛みを感じます。硬いドライフードを噛むたびに痛みが走るため、食事を避けるようになるのです。口臭が強くなった、よだれが増えた、歯茎が赤いなどの症状は歯周病のサインです。
3. 消化器系の問題(腸内環境の悪化)
加齢に伴い、胃腸の働きも徐々に衰えます。消化酵素の分泌が減ったり、腸の蠕動運動が弱まったりすることで、食べ物をうまく消化・吸収できなくなるのです。
腸内環境のバランスが崩れ悪玉菌が増えると、消化不良による胃もたれや腹部の不快感、便秘・下痢といった症状が現れ、食欲不振に直結します。食べた後に気持ち悪くなる経験が続くと、犬は食事そのものにネガティブなイメージを持ってしまうこともあります。
4. 内分泌系(ホルモン)の病気
体の機能を調整するホルモンのバランスが崩れることも、食欲不振の原因となります。代表的な病気が「甲状腺機能低下症」です。新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンが減少する病気で、元気消失、体重増加などの症状とともに食欲低下が見られることがあります。
また、「クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)」では、多飲多尿が特徴的ですが、病気の進行によって食欲が落ちるケースもあります。
5. 腎臓病や肝臓病などの内臓疾患
シニア犬の食欲低下で最も注意したいのが、腎臓病、肝臓病、心臓病といった内臓疾患の存在です。これらの病気は初期症状が現れにくく、食欲不振が最初のサインであることも少なくありません。
例えば、腎臓病が進行すると体内に老廃物が溜まる尿毒症となり、吐き気や倦怠感から食欲が完全になくなってしまいます。これらの病気は命に関わるため、食欲低下が続く場合は、早めに動物病院で検査を受けましょう。
6. ストレスや環境の変化
身体的な問題だけでなく、精神的なストレスも食欲低下の原因になります。シニア犬は環境の変化に非常に敏感です。
引っ越し、家族構成の変化、騒音など、生活環境の変化がストレスになり得ます。不安や恐怖を感じていると食事どころではなくなってしまうため、愛犬が安心して過ごせる環境を整えることが大切です。
7. 関節などの痛み
一見食事と関係ないように思えますが、足腰の関節炎(変形性関節症)なども食欲低下の原因になります。食事の際に前かがみになる姿勢が、首や背中、足の関節に痛みをもたらし、食べることを嫌がるようになるケースです。
食器の高さを調整してあげることで改善することもあります。
食欲がないシニア犬に試したい!家庭でできる食事の対策と工夫
愛犬がご飯を食べないとき、飼い主様としては何とかして栄養を摂らせたいものです。ここでは、病気が原因でない場合や、治療と並行して行える、家庭でできる食事の対策と工夫をご紹介します。
フードの与え方を見直す工夫
まずは、いつも与えているフードの「与え方」を少し変えてみましょう。
- ぬるま湯でふやかす:フードが柔らかくなり、歯が弱いシニア犬でも食べやすくなります。香りが立つため食欲刺激の効果も期待できます。
- 人肌程度に温める:電子レンジで数秒温めるだけで、風味が格段に増します。
- 食事の回数を増やす:1日2回から3~4回に増やし、一回の量を減らすと消化器への負担が軽くなります。
- 食器の高さを調整する:台などを使い、楽な姿勢で食べられるように高さを調整してあげましょう。首や関節への負担が軽減されます。
食欲を刺激する「トッピング」活用術
いつものフードに飽きてしまった、香りが弱くて興味を示さない、という場合には「トッピング」が有効です。
- ウェットフードや缶詰を少量混ぜる
- 茹でて細かく裂いた鶏ささみ
- 風味の良いカツオ節や犬用の粉チーズ
- 柔らかく煮てペースト状にしたカボチャやブロッコリー
- 栄養価が高いヤギミルクをかける
ただし、トッピングの与えすぎは栄養バランスの偏りや肥満の原因になります。トッピングは全体の食事量の1割程度に留めましょう。また、玉ねぎやチョコレートなど、犬に有害な食べ物は絶対に与えないでください。
食べやすいシニア犬用ドッグフードの選び方
シニア犬の身体に合わせて、フードそのものを見直すことも重要です。
- 消化性:消化しやすい良質なたんぱく質を使い、脂肪分が抑えられたフードを選びましょう。
- 機能性成分:関節ケア成分(グルコサミン等)や腸内環境を整える成分(乳酸菌等)が配合されているものがおすすめです。
- 粒の形状:飲み込む力が弱い犬のために、小粒で食べやすい形状や、噛み砕きやすいドーナツ型のフードもあります。
腎臓病などの持病がある場合は、必ず獣医師の指導のもと、状態に合わせた療法食を与えてください。
食事からの水分補給も重要
食欲低下と同時に心配なのが水分不足です。食事量が減ると脱水症状に陥りやすくなります。ドライフードをふやかす、ウェットフードを取り入れる、スープ状の介護食を与えるなどの工夫で、食事と一緒に水分を摂らせることができます。
これは危険信号?動物病院へ行くべき症状とタイミング
食欲低下は、時に深刻な病気のサインです。家庭での工夫を試しても改善しない場合や、他の症状が見られる場合は、迷わず動物病院を受診しましょう。
すぐに受診すべき緊急性の高い症状
以下の症状が食欲不振と同時に見られる場合は、様子を見ずにすぐ動物病院へ連絡してください。
- ぐったりして元気がない、起き上がれない
- 嘔吐や下痢を繰り返している
- 呼吸が速い、苦しそうにしている
- 震えが止まらない
- お腹がパンパンに張っている
- 24時間以上、全く何も食べず、水も飲まない
これらの症状は、急性膵炎や胃拡張・胃捻転など、命に関わる状態を示唆している可能性があります。
病院に行くかどうかの判断基準
緊急性は高くないものの、受診を検討すべきケースもあります。
- 食欲不振が2~3日以上続く:元気があって水も飲めていても、ご飯を食べない状態が続くなら受診をおすすめします。
- 体重減少が見られる:定期的に体重を測定し、明らかに体重が減っている場合は、病気が隠れている可能性があります。
- 食べムラが悪化している:徐々に食べる総量が減ってきていると感じたら、獣医師に相談しましょう。
獣医師に伝えるべきこと
受診の際は、愛犬の様子を正確に伝えることが的確な診断につながります。事前に以下の情報を整理しておきましょう。
- いつから食欲がないか(急に or 徐々に)
- 他の症状(嘔吐、下痢、便秘、多飲多尿、咳、元気の有無など)
- 便や尿の状態(色、形、量、回数)
- 普段の食事内容(フードの種類、量、おやつ)
- 最近の環境変化(引っ越し、新しい家族など)
言葉での説明が難しい場合は、スマートフォンの動画で愛犬の様子を撮影しておくと、獣医師が状態を把握しやすくなります。
まとめ
シニア犬の食欲低下は、単なる老化現象から深刻な病気のサインまで、実に多様な原因によって引き起こされます。飼い主様がその変化にいち早く気づき、原因を探ることが、愛犬の健康で快適なシニアライフを守るための第一歩です。
まずはフードの工夫を試しながら愛犬の様子を注意深く観察し、食欲不振が続く、体重が減る、他に気になる症状があるといった場合には、決して自己判断せず、かかりつけの動物病院に相談しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1: 食欲はあるのに食べられないようです。何が原因ですか?
フードに興味を示し口元まで行くのに食べるのをやめてしまう場合、最も多い原因は歯周病や口内炎など口の中の痛みです。硬いフードが歯に当たって痛むため、食べるのをためらいます。また、首や関節の痛みで前かがみの姿勢がつらい可能性もあります。痛みの原因を特定するためにも、一度獣医師に相談することをおすすめします。
Q2: 老犬に手作り食を与える場合の注意点はありますか?
手作り食は、栄養バランスを完璧に整えるのが非常に難しいという課題があります。栄養が偏るとかえって体調を崩す原因になりかねません。基本的には総合栄養食のドッグフードを主食とし、手作り食は食欲を刺激するためのトッピングとして少量活用するのが安全です。本格的に切り替えたい場合は、必ず獣医師やペット栄養管理士などの専門家に相談してください。
Q3: 食欲を増進させる薬やサプリメントはありますか?
動物病院では食欲増進を目的とした薬が処方されることがあります。また、腸内環境を改善するプロバイオティクスや消化酵素などのサプリメントが有効な場合もあります。ただし、薬もサプリメントも体質や持病によっては合わないことがあります。自己判断で与えるのではなく、必ず獣医師に相談の上、その子に合ったものを適切に使用することが重要です。
- 老犬の食欲不振は、単なる老化だけでなく病気のサインである可能性もあるため、注意深く観察しましょう。
- 家庭では、フードの温め、回数の調整、安全なトッピングなどで愛犬の食欲を刺激する工夫が可能です。
- ぐったりしている、嘔吐や下痢、24時間以上食べないなど、緊急性の高い症状が見られた場合は直ちに動物病院を受診してください。
- 食欲不振が続く場合や体重減少が見られる場合は、自己判断せず、かかりつけの獣医師に相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
- 愛犬の小さな変化を見逃さず、獣医師と協力して健康で快適なシニアライフをサポートしていきましょう。
初回公開日:2025年12月11日
記載されている内容は2025年12月11日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。