爬虫類・両生類を飼う前に知っておきたい法律と責任─終生飼養・特定動物の基礎知識
更新日:2025年11月26日
- 爬虫類・両生類の飼育には、動物愛護管理法、特定動物法、特定外来生物法といった特別な法律知識が必須です。
- 特に「特定動物」や「特定外来生物」に指定された種は、原則飼育禁止や厳格な許可が必要となります。
- 飼い主は、ペットの生涯にわたる「終生飼養」の責任を負い、遺棄は法律で禁じられた犯罪行為です。
- 飼育を始める前に、必ず飼育種が法律に抵触しないか、環境省のリストなどで確認しましょう。
- 法律を理解し、適切な知識と覚悟を持って飼育することで、ペットとの共生はより豊かになります。
【まず確認】爬虫類・両生類の飼育に関わる重要法律3選
爬虫類や両生類の飼育を検討する上で、まず理解しておくべき重要な法律が3つあります。これらはペットとの生活を守るだけでなく、社会や自然環境への配慮を示すためのルールです。飼育者としての自覚を持つために、それぞれの法律の目的と内容をしっかりと把握しておきましょう。
1. 動物愛護管理法:終生飼養と適正飼養の義務
「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」は、ペットを飼うすべての人に関わる最も基本的な法律です。この法律の根幹にあるのが「終生飼養」の原則です。これは、一度飼い始めた動物は、その命が尽きるまで適切に飼育する責任があるという考え方です。
爬虫類は種類によっては非常に長寿であり、数十年生きることも珍しくありません。飼い主自身のライフプランの変化も考慮し、最後まで責任を持って飼育できるか、慎重に判断する義務があります。
また、動物愛護管理法では「適正飼養」も定められています。これは、動物の習性や生理に応じた適切な飼育環境(温度、湿度、広さなど)を提供し、健康と安全を維持することです。不適切な環境での飼育は、動物虐待と見なされる可能性があります。
さらに、動物を遺棄することは犯罪であり、違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金という重い罰則が科されます。「飼えなくなったから」という理由は決して通用しません。
2. 特定動物(危険な動物)の飼養・保管に関する法律:飼育は原則禁止
人の生命、身体または財産に害を加えるおそれがある危険な動物は「特定動物」として指定され、その飼育は原則として禁止されています。これには、ワニ、大型の毒ヘビ、大型のオオトカゲなどが含まれます。
例外的に、動物園での展示や研究目的など、特別な理由がある場合に限り、都道府県知事または政令指定都市の長の許可を得て飼育することが可能です。しかし、許可を得るためには、動物が絶対に脱走できない構造の飼育施設を用意するなど、極めて厳格な基準を満たす必要があります。
趣味やペットとして特定動物の飼育許可を取得するのは、現実的に非常に困難です。どの動物が特定動物に該当するかは、必ず環境省のウェブサイトで最新のリストを確認してください。
3. 特定外来生物法:日本の生態系を守るための規制
海外から持ち込まれた生物のうち、日本の生態系に悪影響を及ぼすおそれのあるものは「特定外来生物」に指定されます。「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(特定外来生物法)」に基づき、これらの生物は原則として飼育、運搬、輸入、譲渡などが禁止されています。
爬虫類ではカミツキガメやタイワンスジオ、両生類ではオオヒキガエルなどが指定されています。これらの生物を野に放つことはもちろん、許可なく飼育すること自体が法律違反となり、重い罰則の対象となります。生態系を守ることは、飼育者の重要な社会的責任の一つです。
【飼育前チェックリスト】飼いたいペットは大丈夫?法的手続きの3ステップ
飼いたい種類が決まったら、実際に迎える前に法的な問題をクリアにする必要があります。以下のステップに従って、必要な手続きや規制がないかを確認しましょう。
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STEP1: 飼いたい種類は「特定動物」に該当するか?
まず最初に、飼育を検討している種が「特定動物」に指定されていないかを確認します。環境省の公式ウェブサイトで、最新の「特定動物リスト」を必ず確認してください。
例えば、ワニガメや一部の大型ニシキヘビ(アミメニシキヘビなど)、ドクトカゲ科の全種などが含まれます。これらの動物は、原則として愛玩目的での新規飼育は許可されません。
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STEP2: 「特定外来生物」ではないか確認する
次に、その種が「特定外来生物法」の規制対象でないかを確認しましょう。こちらも環境省のウェブサイトでリストが公開されています。特定外来生物は、たとえ国内で繁殖した個体であっても、許可なく飼育することはできません。
カミツキガメやグリーンアノールなどが代表例です。これらの生物は日本の固有の生態系に深刻なダメージを与えるため、飼育には細心の注意と責任が求められます。
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STEP3: 「ワシントン条約(CITES)」の対象種か?
最後に、国際的な取引が規制されている絶滅危惧種でないかを確認します。これは「ワシントン条約(CITES:サイテス)」によって定められています。
特に規制が厳しい附属書Ⅰに掲載されている種(例:インドホシガメなど)を国内で合法的に飼育・譲渡するためには、「国際希少野生動植物種登録票」が必要となります。この登録票がない個体の売買や譲渡は法律違反(種の保存法違反)です。ペットショップで購入する際は、必ず登録票の原本を受け取るようにしましょう。
初心者が特に注意!法律リスクが高い爬虫類・両生類とは?
法律の知識は、安全で楽しい飼育生活の第一歩です。ここでは、特に初心者が飼育を避けるべき種類と、それに伴う法律上のリスクを具体的に解説します。
許可が必要な「特定動物」は初心者には非推奨
言うまでもありませんが、飼育に許可が必要な「特定動物」は、初心者には絶対に推奨できません。飼育許可の申請は、施設の構造や材質、鍵の種類など、細部にわたる厳しい基準をクリアする必要があります。万が一脱走させてしまった場合の社会的リスクは計り知れず、個人が負える責任の範囲をはるかに超えています。
成長すると巨大化する種類のリスク
購入時には小さくても、成長すると数メートルにもなる種類(グリーンイグアナ、大型のモニター、ボア・パイソン系の一部など)がいます。成長に伴い、より大きなケージや部屋、多くの餌、高額な光熱費が必要になります。将来的な負担を予測せず飼い始め、最終的に飼育困難に陥り遺棄することは、「終生飼養」の義務に違反する行為です。
法律的に問題なくても飼育が難しい種類
法的な規制対象外でも、飼育の難易度が非常に高い種類も初心者は避けるべきです。特定の温度・湿度管理が必須な種、餌の確保が難しい種、非常に神経質な種などが挙げられます。飼育に失敗し、ペットを死なせてしまうことは、適正飼養の義務を果たしていないネグレクト(飼育放棄)と見なされる可能性があります。
飼い主の最大の責任「終生飼養」を全うするために
爬虫類・両生類の飼育における最も重要なキーワードは「終生飼養」です。これは法律上の義務であると同時に、一つの命を預かる者としての倫理的な責任でもあります。
終生飼養とは?最後まで命に責任を持つ義務
「終生飼養」とは、その動物の習性や生態を理解し、生涯にわたって健康で快適な生活を送れるよう、最善の飼育環境を提供し続けることです。適切な飼育環境の提供はもちろん、病気や怪我をした際の適切な医療の提供も含まれます。自分のライフプランと照らし合わせ、最後まで面倒を見る覚悟が求められます。
万が一飼えなくなったら?遺棄は犯罪です
やむを得ない事情で飼育が困難になった場合でも、絶対に「遺棄」をしてはいけません。野外に放す行為は、ペットを危険に晒し、生態系を破壊する犯罪行為です。
どうしても飼えなくなった場合は、まず新たな飼い主(里親)を探しましょう。SNSや専門コミュニティで探す方法があります。それでも見つからない場合は、爬虫類の保護団体や、地域の動物愛護センター、保健所などに相談してください。安易な遺棄に走る前に、必ず公的な機関や専門家へ相談しましょう。
爬虫類の法律に関するQ&A|よくある質問
Q1: 特定動物の飼育許可の申請方法は?
A1: 飼育施設を管轄する都道府県等の動物愛護管理担当部署に行います。申請には図面や計画書など多くの書類が必要で、施設の現地調査も行われます。詳細は自治体によりますが、愛玩目的での新規許可は現在ほとんど認められていません。
Q2: ペットショップで買った爬虫類なら法律的に安心?
A2: 必ずしもそうとは限りません。購入者自身が、飼いたい種類が法律上の規制(特定動物、特定外来生物、ワシントン条約など)に該当しないかを確認する責任があります。購入時には、生体の出所や登録票の有無などを必ず確認しましょう。
Q3: マイクロチップの装着は義務ですか?
A3: 2024年現在、爬虫類・両生類全般への義務化はありません。しかし、特定動物に指定されている動物については、個体識別措置としてマイクロチップの埋め込みが義務付けられています。
Q4: カメの飼育に届け出は必要?
A4: 種類によります。ワニガメは「特定動物」で許可が必要、カミツキガメは「特定外来生物」で新規飼育は原則不可です。リクガメの多くはワシントン条約対象種で「登録票」が必要です。ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)は「条件付特定外来生物」ですが、既に飼っている個体を飼い続けるのに許可は不要です。
Q5: ヘビを飼う際の法律上の注意点は?
A5: 大型のニシキヘビやボアの一部、全ての毒ヘビは「特定動物」であり、趣味での飼育は事実上不可能です。コーンスネークやボールパイソンなど多くは規制対象外ですが、どの種類でも脱走防止対策(鍵付きケージなど)は飼育者の絶対的な義務です。
まとめ:法律と責任を理解し、最高のペットライフを
爬虫類・両生類の飼育は、彼らのユニークな生態を間近で観察できる、非常に奥深く魅力的な趣味です。しかし、その魅力の裏には、動物愛護管理法をはじめとする様々な法律と、命を預かる者としての「終生飼養」という重い責任が存在します。
飼育を始める前には、必ず飼いたい種類に関する法規制を確認し、最後まで責任を持って飼い続けられるかを自問自答してください。この記事で紹介した知識が、あなたとペット、そして社会との良好な関係を築くための第一歩となります。正しい知識と深い愛情、そして揺るぎない覚悟を持って、素晴らしい爬虫類・両生類との共生をスタートさせましょう。
- 爬虫類・両生類の飼育は、関連する法律(動物愛護管理法、特定動物法、特定外来生物法)を理解することが不可欠です。
- 特定動物や特定外来生物の飼育は厳しく制限されており、安易な飼育は法律違反となるリスクがあります。
- 飼い主は、ペットの健康と安全を生涯にわたって保障する「終生飼養」の義務を負います。
- 飼育を開始する際は、必ず環境省のリストやワシントン条約対象種を確認し、必要な手続きを行いましょう。
- 正しい知識と責任感を持って接することで、爬虫類・両生類との充実したペットライフを送ることができます。
初回公開日:2025年11月26日
記載されている内容は2025年11月26日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。